こんにちは。モンテッソーリ教師(AMI国際資格保有)の田中です。10年間保育現場で働き、現在は2人の子どもを育てながら、このメディアを運営しています。
今日は、少し重いテーマかもしれません。でも、きっと多くの保護者の方が心の奥で感じていること、それは「始めた教育法が、うちの子に合わなかった時、どうすればいいの?」という不安ではないでしょうか。
私自身、長女が5歳の時に「これは素晴らしい!」と確信してある英語教材を購入したものの、3ヶ月後には押し入れの奥に仕舞い込んでしまった経験があります。その時の「あの情熱は何だったんだろう」という脱力感と、「娘に合わない教材を選んでしまった」という自己嫌悪。今思い出しても、胸がキュッと締め付けられます。
そんな私だからこそ、今回は「どんぐり倶楽部」について、始めてみたけれど続けられなかった、やめることを選択した保護者の方々の声に、真摯に耳を傾けてみたいと思います。
どんぐり倶楽部とは?まずは基本から理解しましょう
「どんぐり倶楽部って、そもそも何?」という方もいらっしゃるかもしれませんね。簡単にご説明すると、どんぐり倶楽部は、糸山泰造先生が考案された独特な算数・数学教育法です。
どんぐり倶楽部の特徴
絵で解く「良質の算数文章問題」が中心 「ハムスターが3匹います。それぞれのハムスターが、毎日ひまわりの種を4粒ずつ食べます。1週間で、ハムスターたちは全部で何粒のひまわりの種を食べるでしょう」
このような問題を、計算式ではなく「絵」で表現して解いていくのが、どんぐり倶楽部の最大の特徴です。子どもたちは、ハムスターの絵を描き、ひまわりの種を一粒一粒丁寧に描いて、視覚的に問題を解決していきます。
「分からん帳」で間違いを宝物に 解けなかった問題は「分からん帳」という特別なノートに貼り付けます。「間違い=悪いこと」ではなく、「今度挑戦する宝物」として大切に保管するんです。
計算練習は最小限に 一般的な算数教育とは真逆で、反復計算練習は「思考力の敵」として、極力行いません。「考える力」を何よりも重視するのが、どんぐり倶楽部の哲学です。
私も保育現場で、子どもたちが砂場で「こっちの山の方が高いかな?」と友達と比べながら、自然に大小の概念を身につけていく姿を何度も見てきました。どんぐり倶楽部の「子どもの自然な思考過程を大切にする」という考え方には、とても共感できる部分があります。
なぜ多くの保護者がどんぐり倶楽部に魅力を感じるのか
ママ・パパの心を動かす、3つの魅力
「うちの子の可能性を信じたい」という想いに応えてくれる 「計算が早くできることよりも、じっくり考える力の方が大切」「一人ひとりの子どもの個性を尊重する」というメッセージは、わが子の将来に不安を感じる保護者の心に深く響きます。
特に、「うちの子は他の子より計算が遅いかも」「覚えるのに時間がかかる」と心配している保護者にとって、「それでいいんです、むしろその方が思考力が育ちます」と言ってもらえることは、どれほど救いになることでしょう。
既存の教育への疑問に答えを示してくれる 「毎日100問の計算ドリルをさせるのは本当に意味があるの?」「塾で先取り学習をさせているけれど、子どもが楽しそうじゃない」
こんな疑問を抱いている保護者にとって、どんぐり倶楽部の「考える力こそが本当の学力」という主張は、まさに「これが答えだった!」という確信を与えてくれます。
子どもの「今」を大切にしてくれる安心感 「6歳までは外遊び中心で」「子どもらしい遊びの時間を奪わない」という方針は、「もっと勉強させなくちゃ」という焦りに駆られがちな保護者に、「今のままで大丈夫」という安心感を与えてくれます。
私も長女が幼稚園の時、お友達が公文に通い始めたと聞いて、「うちも何かしなくちゃ」と焦った記憶があります。そんな時にどんぐり倶楽部の考え方に出会っていたら、きっと「今は外でたくさん遊んで、心も体も大きく育てよう」と思えたでしょう。
実際にやめた方々の声:なぜ続けられなかったのか
ここからは、実際にどんぐり倶楽部を始めたものの、続けることができなかった保護者の方々の声をご紹介します。これらは、私がこれまでの保育現場や、このメディアの読者の方から伺った、リアルな体験談です。
「期待していた効果が見えなかった」という戸惑い
Aさん(小1の男の子のママ)の体験談 「息子が算数で苦戦していたので、どんぐり倶楽部なら楽しく学べるかもと思って始めました。でも、3ヶ月経っても、学校のテストの点数は全然上がらないんです。
絵を描くのは楽しそうにしているけれど、『本当にこれで算数ができるようになるの?』という不安が日に日に大きくなって。周りのお友達は公文でどんどん先の学年の問題を解いているのを見ると、『このままで大丈夫かな』って心配になってしまいました」
Aさんのお気持ち、とてもよく分かります。どんぐり倶楽部は「長期的な視点で考える力を育てる」ことを重視しているため、短期間で目に見える成果を求めてしまうと、「効果がない」と感じてしまうことがあるんです。
保育士としての視点から 私も保育現場で、「うちの子、まだひらがなが書けないんです」と心配される保護者の方によくお会いします。でも、その子がお友達の話を最後まで聞いて、「それは悲しかったね」と共感している姿を見ると、「この子にはもっと大切な力が育っているな」と感じることがあります。
どんぐり倶楽部の効果も同じで、テストの点数には表れにくいけれど、「物事を多角的に考える力」「最後まで諦めずに取り組む粘り強さ」といった、本当に大切な力が育っているかもしれません。
ただ、保護者としては「目に見える成果がほしい」と思うのも、ごく自然なことです。特に学校のテストで苦戦している子どもを見ていると、「今すぐ何とかしてあげたい」という気持ちになりますよね。
「子どもとの関係がギクシャクしてしまった」という悩み
Bさん(小2の女の子のママ)の体験談 「娘は絵を描くのが大好きだったので、どんぐり倶楽部はぴったりだと思ったんです。でも、問題を解く時に、私がつい『その絵じゃ分からないよ』『もっと丁寧に描いて』と口を出してしまって。
最初は楽しそうにしていた娘が、だんだん『ママと一緒だとやりたくない』と言うようになってしまいました。どんぐり倾楽部は素晴らしい方法だと思うけれど、私の関わり方が悪かったんでしょうね」
Bさんの体験談を聞いて、私も胸が痛みました。きっとBさんは、娘さんのことを思って、一生懸命になっていたんですよね。
親子関係への影響について どんぐり倶楽部は「保護者も一緒に楽しむ」ことを推奨しているのですが、これが思わぬ落とし穴になることがあります。保護者が「正しいやり方で進めなくちゃ」と考えすぎると、子どもの自由な発想を制限してしまったり、親子の時間が「勉強の時間」として重くなってしまったりするんです。
私も長女との工作の時間で、「もっときれいに作りなさい」と言ってしまい、長女が「ママと作るの、楽しくない」と言われた経験があります。その時の長女の悲しそうな顔を思い出すと、今でも胸が締め付けられます。
子どもにとって何が一番大切か どんな教育法であっても、子どもが「楽しくない」「やりたくない」と感じるようになってしまったら、それは本末転倒です。どんぐり倶楽部の理念は素晴らしいものですが、その理念を大切にするあまり、目の前の子どもの気持ちを見失ってしまっては意味がありません。
「学校の勉強との両立が難しい」という現実的な問題
Cさん(小3の男の子のママ)の体験談 「どんぐり倶楽部では『計算練習は最小限に』と言われているのですが、学校では毎日計算ドリルの宿題が出るんです。息子は『どっちが正しいの?』と混乱してしまって。
学校の先生に相談したら、『家庭でも反復練習をお願いします』と言われるし、どんぐり倶楽部では『それは思考力を阻害します』と言われるし、板挟みになってしまいました」
これは、どんぐり倶楽部を続ける上で、多くの保護者が直面する深刻な問題です。
教育方針の違いに直面する難しさ 日本の学校教育は、まだまだ「反復練習による定着」を重視している側面があります。一方、どんぐり倶楽部は「反復練習よりも思考力」という、真逆の考え方を提示しています。
保護者としては、どちらも大切だと思いつつ、「学校の成績も気になるし、でも思考力も育てたいし」という板挟み状態になってしまうんです。
私も保育現場で、「家では子どもの興味を大切にしているのに、小学校に上がったら宿題が山ほど出て、子どもが勉強嫌いになってしまった」という保護者の方のお話を伺ったことがあります。
子どもへの影響 特に真面目な子どもほど、「家と学校で言っていることが違う」という状況に混乱してしまいます。「どっちが正しいの?」「僕は何をすればいいの?」という疑問を抱きながら勉強するのは、子どもにとって大きなストレスになります。
「家族の理解が得られなかった」という孤独感
Dさん(小1の女の子のママ)の体験談 「私はどんぐり倶楽部の考え方にとても共感していたのですが、夫が『そんな遊びみたいなことより、しっかり勉強させろ』と言うんです。義母も『近所の○○ちゃんは、もう九九を覚えているのに』と比較するし。
一人で頑張ろうと思ったけれど、家族の理解がないと、本当に孤独で辛くて。結局、娘にも『なんでママだけ変わったことをするの?』と言われてしまいました」
これも、多くの保護者が抱える深刻な悩みです。
周囲の理解を得ることの難しさ どんぐり倶楽部は、一般的な教育観とは異なる独特な方法論を持っています。そのため、「なぜそんな回りくどいことをするの?」「普通に勉強させた方が早いでしょう」という反応を示す人も少なくありません。
特に、祖父母世代の方々にとっては、「絵を描いて算数を勉強する」という発想自体が理解しにくいかもしれません。「私たちの時代は、しっかり暗記して、計算練習をして、それで立派に育った」という経験があるからです。
保護者の心理的負担 家族の理解が得られないまま、一人でどんぐり倶楽部を続けようとすると、保護者自身が「本当にこれで合っているのかな」という不安を抱えることになります。特に、子どもの成績が思うように上がらない時期があると、「やっぱり家族の言う通りにした方がよかったのかも」という迷いが生まれてしまいます。
私も、自分なりの子育て方針を持ちながらも、周囲から「それって大丈夫?」と言われると、「もしかして間違っているのかな」と不安になる経験を何度もしてきました。保護者の気持ちが揺らいでしまうと、子どもにもその不安が伝わってしまうんです。
どんぐり倶楽部を続けることが難しい、もう一つの理由
情報の取得と理解の難しさ
独特な専門用語の多さ どんぐり倶楽部には、「視考力」「感味力」「感情の最適化」など、独特な専門用語がたくさん出てきます。これらの言葉の意味を正しく理解し、実際の子育てに活かすのは、思っている以上に難しいことです。
私も最初にどんぐり倶楽部について調べた時、「この言葉の意味がよく分からない」「具体的にどうすればいいの?」と混乱した記憶があります。
情報の整理の大変さ どんぐり倶楽部に関する情報は、書籍、ブログ、掲示板など、様々な場所に散らばっています。「正しい情報はどれ?」「このやり方で合っているの?」と迷いながら、膨大な情報を整理するのは、とても大変な作業です。
特に、働きながら子育てをしている保護者にとって、そこまで時間をかけて情報収集することは現実的ではありません。
継続のためのサポート体制
近くに指導者がいない地域の問題 どんぐり倶楽部の指導者は、まだまだ限られた地域にしかいません。「本当に正しくできているのか分からない」「困った時に相談できる人がいない」という状況では、不安を抱えながら続けることになってしまいます。
孤独感との戦い 周りにどんぐり倶楽部を実践している家庭が少ないと、「本当にこれで大丈夫なのかな」という不安を一人で抱え込むことになります。特に、子どもが学校で苦戦している時期などは、「やっぱり普通の勉強法に変えた方がいいのでは」という迷いが生まれやすくなります。
やめた後の保護者の気持ち:罪悪感との向き合い方
「子どもに申し訳ない」という気持ち
どんぐり倶楽部をやめた保護者の多くが口にするのが、「子どもに申し訳ない」という言葉です。
「せっかく始めたのに、中途半端で終わらせてしまった」 「もしかしたら、あと少し続けていれば効果が出たかもしれないのに」 「子どもの可能性を狭めてしまったのではないか」
こうした気持ちを抱えている保護者の方に、私はいつもこうお伝えしています。
「やめる」ことも立派な判断です
どんな教育法であっても、すべての子どもに合うわけではありません。大切なのは、「わが子にとって何が最良か」を常に考え続けることです。
どんぐり倶楽部が合わないと感じたとき、それを続けることよりも、子どもの様子をよく観察して「やめる」という判断をしたことの方が、よほど子どものことを思った行動だと思います。
子どもは保護者の愛情を感じています
私が保育現場で見てきた子どもたちを思い返すと、「どの教育法を選んだか」よりも、「保護者が自分のことを真剣に考えてくれている」ということを感じている子どもの方が、生き生きとしていました。
どんぐり倶楽部をやめたとしても、その過程で保護者が子どものことを一生懸命考えた時間、一緒に絵を描いて過ごした時間は、決して無駄になりません。子どもは、その時間に込められた愛情をちゃんと感じ取っています。
「時間とお金が無駄になった」という後悔
投資した時間について どんぐり倶楽部について調べたり、問題を選んだり、子どもと一緒に取り組んだりした時間を「無駄だった」と感じる保護者もいらっしゃいます。
でも、その時間は本当に無駄だったでしょうか?子どもと向き合い、子どもの学習について真剣に考えた時間は、きっと今後の子育てにも活かされるはずです。
費用について どんぐり倶楽部の教材費用は、それほど高額ではありませんが、それでも「続けられなかった」という事実があると、「もったいなかった」という気持ちになりますよね。
ただ、他の習い事や教材と比べて考えてみてください。例えば、「合わないな」と思いながらも月謝を払い続けて半年間習い事を続けるよりも、早めに見切りをつけて他の方法を探す方が、結果的に時間もお金も節約できることが多いんです。
どんぐり倶楽部以外の選択肢:やめた後の道筋
子どもの学習スタイルを見極める
どんぐり倶楽部をやめた後、「じゃあ、うちの子にはどんな学習法が合うのだろう」と悩む保護者の方も多いでしょう。
体験的学習が好きな子ども
- 実際に手を動かしながら学ぶのが好き
- 具体的なものを使った説明に反応が良い
- → そろばん、公文、学研教室などの「手を動かす」学習法
視覚的に理解するのが得意な子ども
- 図や絵があると理解が早い
- カラフルな教材に興味を示す
- → タブレット学習、映像授業、図鑑を使った学習
人との関わりを大切にする子ども
- 先生やお友達と一緒だと頑張れる
- 一人で学習するのは苦手
- → 塾、グループ学習、家庭教師
マイペースで学習したい子ども
- 自分のペースで進めたい
- 競争よりも協調を好む
- → 通信教育、家庭学習、図書館での読書
私も長女と次女で、全く違う学習スタイルを持っていることを実感しています。長女は一人でコツコツ取り組むのが好きでしたが、次女は誰かと一緒じゃないとやる気が出ないタイプ。同じ家庭で育っても、こんなに違うんです。
学校の勉強との向き合い方
どんぐり倶楽部をやめた後、多くの保護者が「学校の勉強についていけるか心配」という不安を抱えます。
学校の宿題への取り組み方 まずは、学校の宿題を「やらされるもの」ではなく、「基礎を固めるもの」として捉え直してみましょう。計算ドリルも、「思考力の敵」として避けるのではなく、「計算の自動化により、より高度な思考に集中できるようになるためのもの」と考えることができます。
家庭学習の進め方
- 短時間でも毎日続ける習慣づくり
- 子どもが「できた!」という達成感を味わえる内容から始める
- 間違いを責めるのではなく、「どこで間違えたか一緒に見つけよう」という姿勢
学校の先生とのコミュニケーション 子どもが学校で困っていることがあれば、遠慮なく先生に相談してみてください。多くの先生は、家庭と連携して子どもを支えたいと思っています。
思考力は他の方法でも育てられる
どんぐり倶楽部の大きな魅力の一つは「思考力を育てる」ことでした。でも、思考力はどんぐり倶楽部以外の方法でも育てることができます。
日常生活の中での思考力育成
- 料理のお手伝い:「お米2合って、何人分かな?」
- お買い物:「500円でどれとどれが買えるかな?」
- お散歩:「この道とあの道、どっちが近いかな?」
読書による思考力育成
- 「この後、主人公はどうなると思う?」
- 「なぜこの人は怒ったのかな?」
- 「君だったらどうする?」
遊びを通じた思考力育成
- パズルゲーム
- 積み木やブロック遊び
- しりとりやなぞなぞ
私が保育現場で見てきた子どもたちの中で、本当に思考力が高いなと感じる子は、特別な教材を使っているわけではありませんでした。日常の中で「なぜ?」「どうして?」という疑問を大切にされ、保護者と一緒に考える時間をたくさん持っている子どもたちでした。
専門家として伝えたい、教育法選びの本当に大切なこと
「効果」よりも大切なもの
10年間の保育現場での経験を通して、私が確信していることがあります。それは、「どの教育法を選ぶか」よりも、「子どもが安心して学べる環境があるか」の方が、はるかに重要だということです。
子どもの安心感が学びの土台 どんなに優れた教育法であっても、子どもが「楽しくない」「怖い」「分からなくて恥ずかしい」と感じている状態では、本当の学びは起こりません。
逆に、教育法はごく普通のものであっても、子どもが「安心して間違えられる」「分からないことを素直に聞ける」と感じている環境では、驚くほど学習が進みます。
保護者の不安が子どもに与える影響 保護者が「この方法で本当に大丈夫なのかしら」と不安を抱えながら関わっていると、子どもはその不安を敏感に感じ取ります。どんなに良い教育法であっても、保護者が確信を持てないまま続けることは、子どもにとってマイナスになってしまいます。
「正解」を求めすぎない大切さ
現代の保護者の多くが、「子育てや教育には正解がある」と思い込んでしまっています。でも、本当にそうでしょうか?
一人ひとり違う子どもたち 私が出会ってきた子どもたちは、本当に一人ひとり違います。同じ教育法でも、ある子には効果的だったけれど、別の子には合わなかった、ということは日常茶飯事です。
それは、その教育法が悪いわけでも、子どもの能力が劣っているわけでもありません。単純に「合わなかった」というだけのことです。
試行錯誤こそが子育て 完璧な子育てや教育法は存在しません。大切なのは、子どもの様子をよく観察して、「これは合っているかな?」「ちょっと無理をさせすぎているかな?」と常に軌道修正していくことです。
どんぐり倶楽部を始めて、やめるという経験も、その試行錯誤の一部です。決して失敗ではありません。
子どもが教えてくれること
子どもの反応が最も大切な指標 どんなに理論的に優れた教育法であっても、目の前の子どもが嫌がっているなら、それは「今のその子には合わない」ということです。
子どもの「やりたくない」「つまらない」という気持ちに、素直に耳を傾けてください。大人の価値観で「これは良いものだから」と押し付けるのではなく、子どもの感情を尊重することが、長期的な学習意欲につながります。
「できない」ことから学ぶ どんぐり倶楽部に限らず、子どもが何かに取り組んでいて「できない」状況に直面した時、それは成長のチャンスです。大切なのは、「できない」ことを責めるのではなく、一緒に「どうしたらできるようになるかな」と考えることです。
やめる時の子どもへの伝え方:心を傷つけない言葉選び
子どもが傷つかない伝え方
どんぐり倶楽部をやめることを子どもに伝える時、どんな言葉を選べばいいでしょうか。
避けたい表現
- 「あなたに合わないから」(子どもは自分を責めてしまいます)
- 「効果がないから」(これまでの時間が無意味だったと感じてしまいます)
- 「お母さんが間違っていた」(保護者への不信につながります)
おすすめの伝え方 「○○ちゃんと一緒にどんぐりの問題をやって、お母さんはとても楽しかったよ。○○ちゃんの描く絵も、とても上手だったよね。今度は、別の方法で一緒に勉強してみようか。○○ちゃんがもっと楽しいと思える方法を探してみよう」
大切なポイント
- これまでの時間が意味あるものだったことを伝える
- 子どもの良かった点を具体的に褒める
- 新しい挑戦への期待感を持たせる
- 一緒に探していく姿勢を示す
子どもの気持ちに寄り添う
子どもなりの愛着があることを理解する 保護者は「合わなかった」と思っていても、子どもなりに慣れ親しんだ教材や時間への愛着があるかもしれません。「もうやらないの?」「僕の絵は下手だったから?」という不安を抱く子もいるでしょう。
子どもの感情を受け止める もし子どもが「まだやりたい」「やめたくない」と言ったら、その気持ちを一度しっかりと受け止めてください。「そうなんだね、○○ちゃんはまだやりたいんだね」と共感した上で、「でも、もっと○○ちゃんに合う楽しい方法があるかもしれないよ」と新しい可能性を提示してみましょう。
保護者自身の心のケア:罪悪感から解放されるために
「完璧な母親」という呪縛
多くの保護者が、「子どもにとって最良の選択をしなければならない」「間違った判断をしてはいけない」というプレッシャーを抱えています。
でも、完璧な保護者なんて存在しません。私たちは皆、手探りで子育てをしています。間違いを犯すこともあれば、迷うこともあります。それが当たり前なんです。
私自身の失敗談 私も長女が3歳の時、「早期教育が良い」という情報に踊らされて、高額な英語教材を購入しました。でも、長女は全く興味を示さず、3ヶ月で使わなくなってしまいました。
その時の自己嫌悪は今でも忘れられません。「なんで無駄なものを買ってしまったんだろう」「長女の気持ちを考えずに、自分の不安で行動してしまった」と、本当に落ち込みました。
でも今思えば、その失敗があったからこそ、「子どもの様子をよく観察することの大切さ」「保護者の不安で教育を選んではいけないこと」を学べたんです。
他の保護者との比較をやめる
SNSやママ友の会話で、「あの子は○○ができるようになった」「うちは××をやって効果があった」という情報を聞くと、つい自分の子どもや選択と比較してしまいますよね。
でも、その比較が、本当に子どものためになっているでしょうか?
一人ひとり違う成長ペース 保育現場で様々な子どもたちを見てきて確信していることは、「成長にはその子なりのペースがある」ということです。早く歩き始める子もいれば、ゆっくりと歩き始める子もいます。どちらも正常な成長です。
学習についても同じです。早くから文字に興味を示す子もいれば、体を動かすことの方に夢中な子もいます。大切なのは、その子なりの興味や成長を見守ることです。
情報の取捨選択 現代は情報が溢れすぎています。全ての情報に振り回されていては、子どもにとって本当に大切なことを見失ってしまいます。
「この情報は、うちの子に関係があるかな?」「今の我が家に必要な情報かな?」と、一度立ち止まって考える習慣をつけることをおすすめします。
これからの学習計画:どんぐり倶楽部をやめた後の歩み方
子どもの「好き」を大切にする学習計画
どんぐり倶楽部をやめた後、「じゃあ、何をすればいいの?」と途方に暮れる保護者も多いでしょう。でも、焦る必要はありません。まずは、子どもの「好き」「楽しい」を見つけることから始めてみませんか?
興味の種を見つける観察ポイント
- どんな遊びに夢中になるか
- どんな本を繰り返し読みたがるか
- どんな話題になると目を輝かせるか
- どんな活動をしている時が一番集中しているか
私の次女は、数字には全く興味を示さなかったのですが、生き物の話になると目を輝かせて質問攻めにしてきました。そこで、図鑑を一緒に見たり、動物園に行ったりすることから学習をスタートしました。すると、「なんで象は鼻が長いの?」「キリンの首はなんで長いの?」という疑問から、自然に「比較する力」「推理する力」が育っていきました。
小さな成功体験を積み重ねる 新しい学習方法を始める時は、必ず「できた!」という成功体験から始めることが大切です。難しすぎる課題は、子どもの自信を奪ってしまいます。
例えば、計算が苦手な子には、まず「1+1」から始めて、「すごいね、正解だよ!」という経験をたくさん積ませてあげてください。基礎的なことでも、子どもにとっては立派な成果です。
学校との連携を大切にする
どんぐり倶楽部をやめて、学校中心の学習に戻る場合、学校の先生との連携がとても重要になります。
先生とのコミュニケーションの取り方
- 子どもの家での様子を定期的に報告する
- 困っていることがあれば、早めに相談する
- 学校での子どもの様子を聞く
- 家庭でできるサポートを相談する
私が保育現場で経験してきた限り、多くの先生は家庭と連携して子どもを支えたいと思っています。「こんなこと聞いていいのかな」と遠慮せずに、積極的にコミュニケーションを取ってみてください。
家庭学習の進め方 学校の宿題を中心とした家庭学習に戻る場合も、いくつかのポイントがあります。
- 短時間でも毎日続ける習慣を作る
- 子どもが集中できる時間帯を見つける
- 間違いを責めず、一緒に考える姿勢を持つ
- 頑張ったプロセスを褒める
長期的な視点を忘れない
どんぐり倶楽部をやめたからといって、「思考力を育てる」という目標を諦める必要はありません。思考力は、様々な方法で、長期的に育てていくことができます。
日常生活での思考力育成 毎日の生活の中にも、思考力を育てるチャンスはたくさんあります。
- 朝の支度:「今日は雨だから、何を持っていこうか?」
- 夕食の準備:「4人家族だから、お皿は何枚必要かな?」
- お風呂の時間:「お風呂のお湯と、洗面器のお湯、どっちが多いかな?」
読書を通じた思考力育成 本を読むことは、想像力と思考力を同時に育てる素晴らしい活動です。
- 「この後、どうなると思う?」
- 「なぜこの人はこうしたのかな?」
- 「君だったらどうする?」
こんな会話を挟みながら読書をすることで、自然に考える力が育ちます。
体験を通じた学び 実際に体験することで得られる学びは、どんな教材よりも深く心に残ります。
- 料理のお手伝い:分量を量る、時間を計る、手順を考える
- 工作:設計する、問題を解決する、創意工夫する
- お出かけ:道順を考える、時間を逆算する、計画を立てる
同じような経験をした保護者へのメッセージ
あなたは一人じゃない
どんぐり倶楽部をやめたことで、「私は子育てに失敗したのかも」「子どもに申し訳ない」と感じている保護者の方々に、まずお伝えしたいことがあります。
あなたは一人じゃありません。同じような経験をしている保護者は、実はたくさんいるんです。
私がこれまでお会いしてきた保護者の中にも、様々な教育法にチャレンジして、途中で方向転換した方がたくさんいらっしゃいます。そして、その多くの方が、「あの時の経験があったから、今の子どもとの関係がある」とおっしゃっています。
失敗ではなく、学び どんぐり倶楽部を始めて、やめるという経験を通して、きっとたくさんのことを学ばれたと思います。
- 子どもの学習スタイルについて
- 自分の価値観について
- 家族とのコミュニケーションについて
- 情報の取捨選択について
これらの学びは、今後の子育てに必ず活かされます。決して無駄な経験ではありません。
子どもの成長を長期的な視点で見る
短期的な成果に一喜一憂するのではなく、子どもの成長を長期的な視点で見ることが大切です。
10年後を想像してみてください 今、算数のテストで100点が取れなくても、10年後にはどうでしょうか?大切なのは、「学ぶことが楽しい」「分からないことがあっても諦めずに考える」「困った時は人に聞くことができる」といった、生きていく上で本当に必要な力です。
子どもの中に育っているもの どんぐり倶楽部をやめたとしても、子どもの中には確実に何かが育っています。
- 保護者と一緒に過ごした温かい時間の記憶
- 絵を描いて表現することの楽しさ
- 最後まで考え抜こうとする姿勢
- 間違いを恐れずにチャレンジする勇気
これらは、テストの点数には表れませんが、子どもの人生にとってはかけがえのない財産です。
新しいスタートの応援メッセージ
どんぐり倶楽部をやめることを決断したあなたは、子どものことを真剣に考えている素晴らしい保護者です。その判断力と愛情があれば、きっと子どもにとって最良の道を見つけられるはずです。
これからの子育てが楽しみですね 新しい学習方法を探すプロセスも、子どもと一緒に成長していく貴重な時間です。「今度は何にチャレンジしてみようか」「○○ちゃんはどんなことに興味があるのかな」と、ワクワクした気持ちで向き合ってみてください。
子どもはあなたの愛情を感じています どんな教育法を選んでも、子どもにとって一番大切なのは、保護者の愛情です。あなたが子どものことを想って悩み、考え、行動していることを、子どもはちゃんと感じ取っています。
その愛情こそが、子どもの成長にとって最も重要な栄養なのです。
まとめ:子育てに「正解」はない。だからこそ美しい
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。どんぐり倶楽部をやめるという決断をされた保護者の方、今まさに迷っている保護者の方、それぞれの心の内を思うと、私も胸がいっぱいになります。
保育士として、そして一人の母として
10年間の保育現場での経験と、自分自身の子育ての経験を通して、私が最も強く感じているのは、「子育てに正解はない」ということです。
でも、だからこそ美しいのだと思います。一人ひとり違う子どもたち、一つひとつ違う家庭に、一つの正解があるはずがありません。大切なのは、目の前の子どもをよく見て、その子に合った道を一緒に歩んでいくことです。
どんぐり倶楽部をやめることの意味
どんぐり倶楽部をやめることは、決して失敗ではありません。それは、「わが子にとってより良い道を見つけよう」という愛情の表れです。
その過程で得た経験、学んだこと、子どもと過ごした時間は、すべて価値あるものです。そして、それらは必ず今後の子育てに活かされていきます。
これからの歩み方
どんぐり倶楽部をやめた後も、子どもの成長は続きます。新しい学習方法を見つけたり、子どもの新たな一面を発見したり、きっと素晴らしい出会いが待っているはずです。
大切なのは、子どもの「今」を大切にしながら、長期的な視点を忘れないことです。テストの点数や他の子との比較に一喜一憂するのではなく、子どもが「学ぶって楽しい」「考えるって面白い」と感じられるような環境を作ってあげてください。
最後に
このメディアを読んでくださっている皆さんは、皆、子どものことを心から愛している素晴らしい保護者だと思います。どんな選択をしても、その愛情こそが子どもにとって一番の宝物です。
もし今、迷いや不安を抱えていらっしゃるなら、一度深呼吸をして、子どもの笑顔を思い浮かべてみてください。その笑顔を守ることが、どんな教育法よりも大切なことなのかもしれません。
子育ては「正解」探しの旅ではありません。子どもと一緒に、一歩一歩歩んでいく、愛情いっぱいの冒険です。どんぐり倶楽部をやめたとしても、その冒険は続いています。
これからも、お子さんと一緒に、素敵な学びの時間を過ごしていってくださいね。
あなたの子育てを、心から応援しています。