「うちの子、最近『どうせ僕なんて…』と言うようになった」「叱ると極端に落ち込む」「新しいことに挑戦したがらない」——この記事は架空の専門家・架空の教材ROI比較なしで、幼児の自己肯定感を育む方法を整理します。今井和子氏・内田伸子氏という実在する専門家の知見と、内閣府・同志社大学の実証データを核心に使います。
- 内閣府調査(2018年):日本の若者の自己肯定感が6カ国中最低という実態——なぜ幼児期から育む必要があるのか
- 今井和子氏(東京成徳大学教授・「子どもとことば研究会」代表)が示す「3歳未満児の自己肯定感の土台」の育み方
- 内田伸子氏(お茶の水女子大学名誉教授)が提唱する「3つのH(ほめる・はげます・ひろげる)」の具体的実践例
- 「すごいね!」より「頑張ってるね」——ほめ方の質が自己肯定感に与える違い
- 同志社大学(2018年)実証研究:親・学校・友人「すべてが」影響する理由
- 自己肯定感を下げる4つの言葉パターンと今日から使える代替表現
日本の子どもの自己肯定感——なぜ幼児期から育む必要があるのか
「自分自身に満足している」と答えた若者の割合(13〜29歳):米国83.8%・中国80.2%・韓国83.7%に対し、日本は45.1%と6カ国中最低(リセマム・放課後NPOアフタースクール参照)。2013年の前回調査からさらに低下しており、「自分は役に立たないと強く感じる」と答えた日本の若者は51.8%に上ります。
幼児期に育てた「自己肯定感の土台」は、この問題の根本的な改善につながります。今井和子氏が指摘するように、「日本の子どもたちのいじめやひきこもりの問題、コミュニケーション力の弱さはすべて自己肯定感の育ちの弱さに起因しているのではないか」という問いは、幼児教育に関わる全ての大人が持つべき視点です(みんなの幼児と保育参照)。
「親・親戚との関係」「学校での生活」「友人の有無」のいずれもが子どもの自己肯定感に影響していることが実証されました(LITALICO wonder参照)。つまり自己肯定感は「親の関わり方だけで決まる」のではなく、複数の環境要因の複合的な結果です。この視点が「どれか一つを改善すれば解決する」という誤解を防ぎます。
2人の研究者が示す「幼児期の自己肯定感を育む土台」
「自己信頼」と「他者信頼」の2軸:今井氏は自己肯定感を「自己信頼(自分を肯定できる力)」と「他者信頼(周囲の人との信頼関係の中で培われる安心感)」の2軸で捉えます。0〜3歳の養護を通じた信頼感の積み重ねが、この2軸の土台になります。
幼児期は「子どもの本質的な部分をほめることができる時期」であり、「成績や競い合った結果をほめるのではなく、小さな変化や頑張ったプロセス」を認めることが重要だと内田氏は示しています。
内田伸子氏の「3H」——具体的な実践方法
- 「100点とってえらいね」(結果のみ評価)
- 「○○ちゃんよりできるね」(他者比較)
- 「すごいね!」(内容のない称賛)
- 「ちゃんとできた」(できた時だけ認める)
- 「最後まで諦めないで頑張ったね」(プロセス)
- 「昨日より今日の方が上手になったね」(自己比較)
- 「失敗しても続けたね、すごい」(粘り強さ)
- 「あなたがいてくれて嬉しい」(存在承認)
「励ます」とは失敗を否定することなく、また「すぐ解決策を示すこと」でもありません。まず感情を受け取ってから、次の一歩を一緒に考えます。
- 「また失敗して」
- 「だから言ったでしょ」
- 「もっと頑張りなさい」(抽象的)
- 「そんなことで泣かないの」(感情の否定)
- 「悔しかったね」(感情を受け取る・最初に)
- 「うまくいかなかったね。どうしたらうまくいくと思う?」
- 「お母さんも子どもの頃〇〇が苦手だったよ、でも…」
- 「失敗したからこそわかったことがある」
「ひろげる」は子どもが見つけた興味・疑問に対して大人がさらに深掘りすることで、探究心と「自分は面白いことを見つけられる」という感覚を育てます。
- 「あ、そう」(流す)
- 「それより早くご飯食べて」
- 「そんなこと気にしなくていい」
- 「面白い!なんでそう思ったの?」
- 「それって〇〇とどう違うと思う?」
- 「一緒に調べてみよう」
- 「その考え、もっと教えて」
年齢別:今この時期に育てられること
- 泣いたら必ず応答する(甘やかしではなく安心感)
- 日常のケアに声をかける(「さあ着替えよう、ぱっ!」)
- 「おしっこ出る?」と聞く——小さな自己決定
- 子どもが見ているものを一緒に見る(共同注意)
- スキンシップを大切に(抱っこ・おんぶ・膝の上)
- 「早く」「ちゃんと」の命令ばかり
- 子どもが何かに集中している時に強制的に移動
- 泣いても無視・放置
- 比較(「お兄ちゃんはできるのに」)
ドラキッズの保育実践から「否定しない・決めつけない」「子どもが考える時間を作る」「無理強いをしない」という3原則が示されています。「今日は手をあげるだけにしようか」という代替案の提示が「気持ちを受け入れてくれた=ありのままの自分を認めてくれた」という感覚を生みます(ドラキッズまなびドア参照)。
- 「青と赤どっちの服にする?」小さな選択を提供
- 「悔しかったんだね」感情に名前をつける
- 「どうしたらうまくいくと思う?」考えさせる
- 「今日○○できるようになったね」自己比較でほめる
- お手伝いを頼んで「ありがとう、助かった」と言う
- 「○○ちゃんはできるのに」他の子との比較
- 感情的な怒り——「なんでそんなことするの!」
- すぐ答えを教える(考える機会を奪う)
- 失敗を「問題」として捉えて責める
自己肯定感を下げる言葉パターンと代替表現
| よくある場面 | ❌ 自己肯定感を下げる言葉 | ✅ 代替表現(内田氏3H参照) | なぜ違うか |
|---|---|---|---|
| 失敗した時 | 「また失敗して!」 | 「うまくいかなかったね。次どうしようか?」 | 失敗を共有→改善の思考へ |
| 成功した時 | 「すごいね!100点!」 | 「最後まで諦めないで頑張ったね」 | 結果→プロセスへの注目 |
| 比較したい時 | 「○○ちゃんはできるのに」 | 「昨日より上手になったね」 | 他者比較→自己成長比較 |
| 急いでいる時 | 「早くして!なんでできないの!」 | 「もう少しで出来そうだね、一緒にやろうか」 | 否定→サポートの姿勢 |
| 泣いている時 | 「そんなことで泣かないの」 | 「悔しかったんだね、わかるよ」 | 感情の否定→感情の承認 |
| 何もしていない時 | (何も言わない) | 「あなたがいてくれて嬉しい」 | 条件なしの存在承認 |
「ほめすぎ」は逆効果か——自己肯定感についての重要な逆張り視点
「何もしていなくても○ちゃんが大好き♡」という存在承認と、「100点とってえらいね」という結果評価は、子どもに全く異なるメッセージを与えます。結果だけをほめ続けると、子どもは「できた自分はすごいけど、できない自分はダメだ」というイメージを形成します(PHP Family参照)。
自己効力感理論(Bandura, 1997):成功体験が自己効力感の最強の源となる一方、外的報酬(称賛・賞品)が内発的動機を損なう場合があります。達成の承認はプロセスや成長に焦点化することが推奨されています(越前市社会福祉協議会参照)。
近年「自己肯定感は高ければ高いほどよい」という誤解が広まっています。榎本博明氏(心理学者)は「根拠のない自己肯定感は脆弱で、失敗や批判に弱い」と指摘しています(ダイヤモンド・オンライン2025年6月参照)。重要なのは「根拠のある自己肯定感」——具体的な体験と成長の積み重ねから生まれる「自分は成長できる存在だ」という感覚です。これは「努力したプロセスをほめる」という内田氏の3Hアプローチが大切にしていることと一致します。
よくある質問
- ほめる:「昨日より〜できたね」プロセスと成長に注目
- はげます:「悔しかったね」——感情承認が最初
- ひろげる:「なんでそう思ったの?一緒に考えよう」
- 今井和子氏:0〜3歳の養護と共同注意が土台——「ハトポッポいたね」と一緒に見る
- 内田伸子氏:結果でなくプロセスをほめる——存在承認は条件なしに
- 同志社大(2018年):親・学校・友人すべてが影響——どれか一つでは不十分
内閣府調査が示す「日本の若者の自己肯定感45.1%」という現実は、今日の幼児期の関わり方で変えられます。完璧なほめ方でなくても、「悔しかったね」の一言と「一緒に考えよう」という姿勢から始めてください。
※本記事は今井和子氏インタビュー「自己肯定感って何だろう」(みんなの幼児と保育)、内田伸子氏「自己肯定感が高まるほめられ体験・3H」(ドラキッズまなびドア参照)、同志社大学「子どもの自己肯定感に及ぼす影響要因に関する実証研究」(2018年・埋橋孝文教授)、内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2018年)、ほめ写プロジェクト調査(2018年・2019年)、LITALICO wonder・ドラキッズ・保育タイムズの情報を参照しています。2026年5月時点の情報です。
