「貸して」「どうぞ」が言える子になる。友達との関わりを学ぶ2・3歳児への伝え方

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  1. はじめに:2・3歳の「貸して」問題、実は成長の証拠です
  2. 2・3歳児の社会性発達を理解しよう
    1. なぜ「貸して」「どうぞ」が難しいのか?
  3. 年齢別・場面別の効果的なアプローチ
    1. 2歳児への関わり方
    2. 3歳児への関わり方
  4. 【専門家の視点】よくある失敗事例とトラブル回避術
    1. 失敗事例1:「強制的に貸させる」アプローチ
    2. 失敗事例2:「いい子にしなさい」プレッシャー
    3. 失敗事例3:「比較」による動機づけ
  5. 社会性を育む日常の関わり方
    1. 家庭でできる「共感」を育てる遊び
    2. 集団生活での社会性発達を促すポイント
  6. 実践のステップ:段階的なアプローチ
    1. ステップ1:基礎作り(1歳後半~2歳前半)
    2. ステップ2:関わりの芽生え(2歳前半~2歳後半)
    3. ステップ3:協力の楽しさ(2歳後半~3歳前半)
    4. ステップ4:共感と配慮(3歳前半~3歳後半)
  7. あなたのお子さんに合ったアプローチの選び方
    1. 子どもの気質別対応法
    2. 家庭環境別のアドバイス
  8. よくある質問(Q&A)
    1. Q1: 人見知りが激しく、お友達に近づくことすらできません
    2. Q2: 逆におもちゃを取られても何も言えません。これで大丈夫?
    3. Q3: 発達がゆっくりで、同年齢の子についていけません
    4. Q4: 保育園で問題行動があると言われました
    5. Q5: 他の保護者の目が気になって、つい「貸しなさい」と言ってしまいます
    6. Q6: きょうだい間でケンカばかり。「貸して」どころじゃありません
    7. Q7: 3歳なのに全く貸そうとしません。発達に問題があるのでしょうか?
  9. まとめ:「貸して」「どうぞ」は心の成長の第一歩
    1. 大切にしたい3つの視点
    2. 保護者の皆さんへのメッセージ

はじめに:2・3歳の「貸して」問題、実は成長の証拠です

「うちの子、お友達におもちゃを貸してあげられないんです…」「『貸して』って言われても『ダメ!』って言ってしまって恥ずかしい」「公園でおもちゃの取り合いになって、どう声をかけたらいいか分からない」

そんな悩みを抱えていませんか?実は、この「貸したくない」「取られたくない」という気持ちこそが、お子さんの健全な発達の証拠なのです。

この記事で分かること:

  • 2・3歳児にとって「貸し借り」がなぜ難しいのか、発達心理学的背景
  • 年齢別・場面別の効果的な声かけ方法
  • 親がやってしまいがちなNG対応と改善策
  • 社会性を育む日常の関わり方
  • 専門家が教える「共感の気持ち」を育てるコツ

【専門家の視点】として、保育の現場で20年以上子どもたちを見てきた経験から、「無理やり貸させる」のではなく「相手の気持ちに気づく力」を育てる方法をお伝えします。

2・3歳児の社会性発達を理解しよう

なぜ「貸して」「どうぞ」が難しいのか?

文部科学省の学習指導要領でも示されているように、3歳未満児は「自我の芽生えと他者との関わり」の段階にあり、「自分のもの」という概念が強く、他者への配慮はまだ発達途上です。

2歳児(24~35ヶ月)の特徴

  • 所有の概念が芽生える時期:「これは僕の」「私の」という意識が強くなる
  • 言葉での表現が追いつかない:気持ちはあっても「貸して」「いいよ」が言えない
  • 並行遊び:同じ場所にいても、一人ひとりが自分の遊びに夢中
  • 感情のコントロールが未熟:嫌なことがあると泣く、怒る、叩くなどの行動に出やすい

3歳児(36~47ヶ月)の特徴

  • 他者への興味と関心が高まる:お友達と同じことをしたい、関わりたい気持ちが出てくる
  • ルールを理解し始める:「順番」「約束」という概念が分かり始める
  • 共感の芽生え:相手が泣いていると「どうしたの?」と気にかけることができる
  • 言葉での交渉が可能に:「あとで貸して」「一緒に遊ぼう」などの提案ができるように

【発達心理学の研究より】 エリク・エリクソンの発達理論によると、2~3歳は「自律性vs恥・疑惑」の段階。自分でやりたい気持ちと、うまくできない現実のギャップに揺れ動く時期です。この時期に無理やり「貸しなさい」と強制すると、自律性の発達を阻害し、「恥」や「疑惑」の気持ちを強めてしまう可能性があります。

年齢別・場面別の効果的なアプローチ

2歳児への関わり方

基本的な考え方

2歳児にとって「貸す」という行為は、まだ高度すぎます。**「貸さなくてもいい」「自分のものを大切にする気持ちも大事」**ということを前提に、少しずつ「一緒に遊ぶ楽しさ」を経験させることから始めましょう。

具体的な声かけ例

場面1:公園で他の子におもちゃを「貸して」と言われた時

NG対応 「ちゃんと貸してあげなさい!」 「お友達が悲しい顔してるでしょ」 「ケチな子ね」

おすすめ対応

「〇〇ちゃんの大切なおもちゃだもんね。まだ遊びたかったんだね」
(子どもの気持ちを受け止める)

「お友達も同じおもちゃで遊びたいんだって。どうしようか?」
(問題を一緒に考える姿勢を示す)

「一緒に遊ぶ?それとも、もう少し〇〇ちゃんが遊んでから貸す?」
(選択肢を提示)

場面2:友達のおもちゃを取ってしまった時

NG対応 「勝手に取っちゃダメ!」 「『貸して』って言いなさい!」

おすすめ対応

「あ、そのおもちゃで遊びたかったのね」
(子どもの気持ちを理解)

「でも、これは〇〇くんが遊んでたおもちゃかな」
(状況を説明)

「『貸して』って言ってみようか。ママと一緒に言おう」
(言葉のモデルを示す)

2歳児に効果的な環境作り

  1. おもちゃを複数用意する:全く同じものでなくても、似たような機能のものを準備
  2. 時間を区切る:「長い針が3になったら交代ね」など視覚的な目安を示す
  3. 代替案を提示:「これで遊んでる間に、こっちで遊ぼうか」

3歳児への関わり方

基本的な考え方

3歳になると、相手の気持ちを理解し、簡単なルールに従うことができるようになります。ただし、まだ感情のコントロールは完全ではないので、「どうして貸すのか」の理由を丁寧に説明し、相手への共感を促すことが重要です。

具体的な声かけ例

場面1:友達におもちゃを貸すことを渋っている時

NG対応 「みんなで仲良く遊びなさい」 「わがまま言わないの」

おすすめ対応

「〇〇ちゃんはまだ遊びたいよね。でも、△△くんも同じおもちゃで遊びたいんだって」
(両方の気持ちを代弁)

「△△くんはどんな気持ちかな?〇〇ちゃんが同じ気持ちになったことある?」
(共感を促す質問)

「5分遊んだら貸してくれる?それとも、一緒に遊ぶ方法を考える?」
(解決策を一緒に考える)

場面2:おもちゃを貸してもらえなくて泣いている時

NG対応 「泣かないの」 「他のおもちゃで遊びなさい」

おすすめ対応

「遊びたかったのに貸してもらえなくて悲しかったね」
(気持ちを受け止める)

「〇〇くんもそのおもちゃが大好きなのかもしれないね」
(相手の立場を想像させる)

「どうしたら一緒に遊べるかな?〇〇ちゃんはどう思う?」
(問題解決思考を促す)

【専門家の視点】よくある失敗事例とトラブル回避術

失敗事例1:「強制的に貸させる」アプローチ

失敗例 2歳の息子がブランコを譲らないので、「お友達が待ってるでしょ!降りなさい!」と強制的に降ろし、泣きながら他の子に譲らせた。その後、息子は公園に行くのを嫌がるようになった。

なぜ失敗したか

  • 子どもの気持ちを無視した強制的な対応
  • 「貸す=嫌な体験」という記憶が刻まれてしまった
  • 自主的に貸したいという気持ちを育てる機会を失った

改善策

✅ まず子どもの気持ちを受け止める
「ブランコ楽しいよね。まだまだ乗りたいよね」

✅ 状況を説明する
「お友達も〇〇ちゃんと同じくらいブランコが好きなんだって」

✅ 選択肢を提示する
「あと10回こいだら交代する?それとももう少し乗る?」

✅ 貸してくれた時は具体的に褒める
「お友達のことを考えて貸してくれたのね。優しい気持ちだね」

失敗事例2:「いい子にしなさい」プレッシャー

失敗例 3歳の娘がおもちゃを貸したがらない時、「〇〇ちゃんはいい子だから貸してくれるよね」「ママが恥ずかしいからちゃんとして」と言い続けた結果、娘は表面的には従うようになったが、家では癇癪を起こすことが増えた。

なぜ失敗したか

  • 子どもの本当の気持ちより「いい子に見られること」を優先させた
  • 抑圧された感情が家庭で爆発している
  • 「自分の気持ちは大切にされない」という学習をしてしまった

改善策

✅ 「いい子・悪い子」のレッテルを避ける
「〇〇ちゃんの気持ちも大切だよ」

✅ 完璧を求めない
「今日は貸せなくても大丈夫。少しずつ覚えていこうね」

✅ プロセスを評価する
「お友達の顔を見てくれたね。相手のことを考えてくれたんだね」

失敗事例3:「比較」による動機づけ

失敗例 「△△くんはちゃんと貸してくれるのに、〇〇ちゃんは貸せないのね」「お兄ちゃんは優しいのに」など、他の子と比較して動機づけしようとした。子どもは一時的に従ったが、自己肯定感が下がり、友達関係がぎくしゃくするようになった。

なぜ失敗したか

  • 他者との比較は自己肯定感を下げる
  • 「貸すこと」の本当の意味(相手を思いやること)を理解できない
  • 競争意識や嫉妬心を煽ってしまった

改善策

✅ その子なりの成長を認める
「昨日より少し待てるようになったね」

✅ 個性を大切にする
「〇〇ちゃんは慎重に考えるタイプなんだね」

✅ 内発的動機を大切にする
「貸してくれてお友達が嬉しそうだったね。〇〇ちゃんも嬉しい?」

社会性を育む日常の関わり方

家庭でできる「共感」を育てる遊び

1. 人形やぬいぐるみを使った役割遊び

やり方

  • 人形を使って「貸して」「どうぞ」のやりとりを見せる
  • 「うさぎさんが悲しい顔をしてるね。どうしてかな?」と感情に注目させる
  • 子どもに人形の気持ちを代弁してもらう

効果 直接的でない状況で、相手の気持ちを考える練習ができる

2. 絵本を活用した疑似体験

おすすめ絵本

  • 「でんしゃにのって」うららちゃんシリーズ
  • 「ともだちや」シリーズ
  • 「どうぞのいす」

読み方のコツ

「この子はどんな気持ちかな?」
「〇〇ちゃんだったらどうする?」
「最後はどうなったかな?」

3. 日常生活での「お手伝い体験」

  • お母さんが荷物を持っている時:「手伝ってくれる?」
  • 兄弟姉妹がいる場合:「赤ちゃんにおもちゃを持って行ってくれる?」
  • ペットがいる場合:「〇〇(ペット名)にお水をあげようか」

効果 「誰かの役に立つ喜び」を実体験として積み重ねることができる

集団生活での社会性発達を促すポイント

保育園・幼稚園選びの観点

確認すべきポイント

  1. 「貸し借り」に対する方針
    • 強制的に貸させるのか、気持ちに寄り添うアプローチなのか
    • トラブルが起きた時の対処方法
  2. 個人差への配慮
    • 人見知りの子、積極的な子、それぞれへの関わり方
    • 発達段階に応じた期待値の設定
  3. 家庭との連携
    • 園での様子の共有
    • 家庭での関わり方へのアドバイス

【専門家の視点】発達を促す環境設定

物的環境

  • 同じおもちゃを複数個用意する(全く同じでなくてもOK)
  • 子どもの人数に対して十分な量の教材・玩具を準備する
  • 「貸し借り」以外の選択肢(一人遊びできるスペース)も確保する

人的環境

  • 大人が仲立ちとしてそばにいる
  • 感情的にならず、冷静に状況を伝える
  • 子ども同士の自然な解決を見守る時間も作る

実践のステップ:段階的なアプローチ

ステップ1:基礎作り(1歳後半~2歳前半)

目標 他人の存在に気づき、興味を持つ

具体的な方法

  1. 並行遊びを大切にする
    • 同じ場所で違う遊びをしていても「一緒にいる」ことを楽しむ
    • 無理に交流させようとしない
  2. 大人が仲介する
    • 「〇〇ちゃんも車で遊んでるね」「△△くんも積み木を積んでるよ」など、お互いの存在を意識させる言葉かけ
  3. 模倣を促す
    • 「〇〇ちゃんと同じことしてみる?」
    • 一緒に手を叩く、歌う、踊るなど簡単な活動から

ステップ2:関わりの芽生え(2歳前半~2歳後半)

目標 相手に興味を持ち、簡単なやりとりを楽しむ

具体的な方法

  1. 「一緒」の体験を増やす
    • 一緒におやつを食べる
    • 一緒に歌を歌う
    • 一緒に散歩に行く
  2. 簡単な役割分担を経験する
    • 「〇〇ちゃんはブロックを、△△くんはお皿を持ってきて」
    • 「一緒にお片付けしよう」
  3. 相手の気持ちに気づく言葉かけ
    • 「お友達が笑ってるね」「嬉しそうな顔だね」
    • 「あれ?悲しい顔してるかな?」

ステップ3:協力の楽しさ(2歳後半~3歳前半)

目標 相手と協力する楽しさを知り、簡単な約束を守る

具体的な方法

  1. 協力が必要な遊びを導入
    • シーソー、大きなボールの転がし合い
    • 協力しないとできない積み木遊び
    • 手をつないで歌う遊び
  2. 順番の概念を育てる
    • タイマーや砂時計を使った交代制
    • 「〇〇ちゃんの次は△△くん」の約束
    • 「待つ」時間も楽しめる工夫(歌を歌う、数を数えるなど)
  3. 相手への関心を深める
    • 「〇〇くんが好きな色はなんだろうね?」
    • 「△△ちゃんの好きな食べ物、覚えてる?」

ステップ4:共感と配慮(3歳前半~3歳後半)

目標 相手の気持ちを想像し、自分から配慮的な行動をとる

具体的な方法

  1. 気持ちの言語化を手助け
    • 「今、どんな気持ち?」
    • 「〇〇くんはどんな気持ちだと思う?」
    • 感情を表す言葉のレパートリーを増やす(嬉しい、悲しい、悔しい、心配など)
  2. 問題解決を一緒に考える
    • 「どうしたらみんなが嬉しくなるかな?」
    • 「他にどんな方法があるかな?」
    • 子どものアイデアを尊重し、実際に試してみる
  3. 貸し借りの成功体験を積み重ねる
    • 小さな成功から始める(短時間、価値の低いものから)
    • 「貸してくれてありがとう」「〇〇ちゃんのおかげで楽しく遊べたよ」など、具体的な感謝を伝える

あなたのお子さんに合ったアプローチの選び方

子どもの気質別対応法

慎重派・人見知りタイプ

特徴

  • 新しい環境や人に時間をかけて慣れる
  • 自分のペースを大切にしたい
  • 強く言われると委縮してしまう

おすすめアプローチ

✅ 無理強いしない
「まだ遊びたいよね。大丈夫だよ」

✅ 時間的な余裕を持つ
「〇分後に交代」などの予告をしっかりと

✅ 安心できる環境を作る
親がそばにいることで安心感を提供

✅ 小さな一歩を認める
「お友達の方を見てくれたね」「考えてくれたんだね」

積極的・活発タイプ

特徴

  • エネルギッシュで行動が早い
  • お友達と関わりたい気持ちが強い
  • 時として相手のペースを考えずに行動してしまう

おすすめアプローチ

✅ エネルギーを適切に発散
体を使った遊びを十分に取り入れる

✅ 相手のペースに気づかせる
「〇〇くんはまだ準備中かもしれないね」

✅ 待つ練習を楽しく
「数を10まで数えている間に準備してもらおう」

✅ リーダーシップを発揮できる場面も
「みんなで楽しく遊ぶにはどうしたらいいかな?」

マイペース・集中タイプ

特徴

  • 一つのことに集中して取り組む
  • 途中で中断されることを嫌がる
  • 自分の世界に入り込みやすい

おすすめアプローチ

✅ 集中している時間を尊重
「もう少し遊びたいんだね」

✅ 区切りをつけやすくする
「この積み木を全部積んだら交代にする?」

✅ 移行をスムーズに
「次は何をして遊ぶ?」と次の活動への興味を引く

✅ 集中力を褒める
「最後まで頑張って作ったんだね」

家庭環境別のアドバイス

兄弟姉妹がいるご家庭

メリットを活かす

  • 日常的に貸し借りの練習ができる
  • 年上の子がモデルになる
  • 自然な役割分担が生まれる

注意点とコツ

✅ 公平性を大切に
「お兄ちゃんだから我慢」ではなく、両方の気持ちを聞く

✅ 個別の関わり時間も確保
一対一で話す時間を意識的に作る

✅ 年齢に応じた期待値
年上の子にも完璧を求めすぎない

一人っ子のご家庭

工夫が必要な点

  • 意識的に他の子との関わりの場を作る
  • 家庭内での「貸し借り」の機会は限定的

対応策

✅ 親子での疑似体験
人形やぬいぐるみを使った遊び

✅ 定期的な交流の場
公園、児童館、習い事など

✅ 親がお手本を見せる
「お母さんにも使わせて」「ありがとう」

共働き家庭

時間の制約があるからこそ

  • 短時間でも質の高い関わりを
  • 保育園・幼稚園との連携を密に

効率的なアプローチ

✅ 日常生活を活用
食事の準備、お風呂の時間など

✅ 移動時間も活用
「今日、お友達と楽しかったことは?」

✅ 週末の過ごし方を工夫
ゆったりと子どものペースに合わせる時間を作る

よくある質問(Q&A)

Q1: 人見知りが激しく、お友達に近づくことすらできません

A: 人見知りは性格の一部であり、決して悪いことではありません。無理に友達と関わらせようとせず、まずは「見ている」「同じ場所にいる」ことから始めましょう。

具体的なアプローチ:

  • 親がそばにいて安心感を提供する
  • 「お友達が楽しそうに遊んでるね」など、観察を言語化
  • 子どものペースに合わせて、少しずつ距離を縮める
  • 強制的な関わりは避け、自然な興味が湧くまで待つ

保育士からの経験談: 人見知りの子は観察力が高く、しっかりと相手を見ています。時間はかかりますが、一度慣れると深い関係を築くことが多いです。

Q2: 逆におもちゃを取られても何も言えません。これで大丈夫?

A: 自分の気持ちを伝えることも大切なスキルです。優しすぎる子には、**「嫌な時は『嫌』って言ってもいいよ」**ということを伝えましょう。

サポート方法:

✅ 気持ちを代弁する
「まだ遊びたかったのに取られちゃって、悲しかったね」

✅ 言葉を教える
「『まだ使ってるの』って言ってみよう」

✅ 段階的に練習
家庭で親子間から始めて、少しずつ他の人との場面で

Q3: 発達がゆっくりで、同年齢の子についていけません

A: 発達には個人差があります。比較ではなく、その子なりの成長を大切にしましょう。「貸し借り」も、言葉が出る前からジェスチャーや表情で十分コミュニケーションできます。

配慮のポイント:

  • 言葉以外の方法(ジェスチャー、表情、絵カードなど)も活用
  • より小さな年齢の子との交流も取り入れる
  • 専門機関(発達支援センターなど)との連携
  • その子の「できること」「興味があること」を見つけて伸ばす

Q4: 保育園で問題行動があると言われました

A: **家庭と保育園での様子が違うのはよくあることです。**まずは保育士さんと詳しく状況を共有し、一貫したアプローチを取りましょう。

連携のポイント:

✅ 具体的な状況の把握
「いつ」「どんな場面で」「どのような行動が」起きているか

✅ 家庭での様子を共有
同じような場面での子どもの反応や対応方法

✅ 一貫した対応の検討
家庭と園で異なるアプローチにならないよう調整

✅ 子どもの良い面も共有
「〇〇な時はとても優しい」「△△が得意」など

Q5: 他の保護者の目が気になって、つい「貸しなさい」と言ってしまいます

A: **「その場しのぎ」の対応は、長期的には子どもの発達に良くありません。**他の保護者の方も、きっと同じような悩みを抱えています。

心の持ち方:

✅ 完璧を求めない
「今日は貸せなくても、成長の途中だから大丈夫」

✅ 子どもの代弁をする
「この子なりのペースで覚えているところなんです」

✅ 他の保護者との関係作り
「お互い様ですね」という雰囲気を作る

✅ 長期的な視点を持つ
一回一回の出来事ではなく、成長の過程として捉える

Q6: きょうだい間でケンカばかり。「貸して」どころじゃありません

A: きょうだい間のやりとりこそ、最も身近な社会性の練習場です。ケンカも大切な学びの機会と捉えましょう。

きょうだい間での工夫:

✅ それぞれの気持ちを聞く
「お兄ちゃんはどう思う?」「〇〇ちゃんはどんな気持ち?」

✅ 解決策を一緒に考える
「どうしたらみんなが嬉しくなるかな?」

✅ 時には個別対応も
一人ひとりと向き合う時間も大切

✅ 成功体験を積み重ねる
うまく解決できた時は具体的に褒める

Q7: 3歳なのに全く貸そうとしません。発達に問題があるのでしょうか?

A: **3歳でも個人差が大きく、「貸し借り」が完璧にできる必要はありません。**ただし、以下のような様子があれば専門家に相談することをおすすめします。

相談を検討する目安:

  • 他者への興味が全く見られない
  • 言葉でのやりとりが極端に少ない
  • 集団生活で著しく困難が続いている
  • 感情のコントロールが他の子と比べて極端に困難

まずは:

  • 子どもの発達相談室での相談
  • 保育士・幼稚園教諭との詳しい情報共有
  • 小児科での発達相談

まとめ:「貸して」「どうぞ」は心の成長の第一歩

「貸して」「どうぞ」が言える・できるということは、単なる社会的マナーではありません。相手の気持ちを想像し、自分の気持ちをコントロールし、より良い関係を築こうとする「心の成長」の表れなのです。

大切にしたい3つの視点

1. 子ども一人ひとりの発達段階を理解する

2歳と3歳、さらに同じ年齢でも個人差があります。「できて当たり前」ではなく、「できるようになってきている」過程を大切に見守りましょう。

2. 強制ではなく共感を育てる

「貸しなさい」という命令ではなく、「相手も同じように遊びたいんだね」という相手への気づきを促すことが、本当の社会性を育てます。

3. 失敗も成長の機会

うまくいかない日、貸せない日があっても大丈夫。「今日はできなかったけど、お友達のことを見ていたね」「次はどうしようか?」と、次につながる声かけを心がけましょう。

保護者の皆さんへのメッセージ

子育てに「完璧」はありません。**今日うまくいかなくても、明日また新しいチャンスがあります。**お子さんの小さな変化、小さな成長を見つけて、一緒に喜んでください。

**「貸して」「どうぞ」が自然に言える子は、きっと人を思いやる温かい心を持った人に育ちます。**その成長を信じて、お子さんのペースに寄り添いながら、一歩ずつ歩んでいきましょう。

【最後に専門家からアドバイス】 20年以上の保育経験から言えることは、**「貸し借りができる子」よりも「相手の気持ちを考えようとする子」の方が、長期的により良い人間関係を築いています。**表面的な行動ではなく、心の成長に目を向けて、お子さんと一緒に成長していってくださいね。


この記事が、お子さんとの日々の関わりの中で少しでもお役に立てれば幸いです。子育ての悩みや不安があるときは、一人で抱え込まず、保育士や専門家、同じような経験をしている保護者の方々と情報を共有することも大切です。みんなで支え合いながら、子どもたちの健やかな成長を見守っていきましょう。