出生時育児休業給付金とは?幼児教育を始めたい夫婦が知っておくべき制度の全て

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お子さんを迎える準備をしている夫婦にとって、経済的な不安は大きな課題の一つです。特に、早期からの幼児教育を検討されている方々にとって、育児休業中の収入減少は深刻な問題となるでしょう。そんな中、2022年10月に始まった「出生時育児休業給付金」という制度をご存知でしょうか。

この記事では、幼児教育に関心の高い夫婦が知っておくべき出生時育児休業給付金について、基本的な仕組みから最新の制度変更まで、実体験を交えながら詳しく解説していきます。

出生時育児休業給付金とは何か

出生時育児休業給付金は、子の出生後8週間の期間内に合計4週間分(28日)を限度として、産後パパ育休(出生時育児休業・2回まで分割取得できます)を取得した場合、一定の要件を満たすと支給を受けることができる制度です。

従来の育児休業制度とは別に設けられたこの制度は、特に男性の育児参加を促進することを目的としており、父親が出産直後から積極的に育児に関わることで、母親の身体的・精神的負担を軽減し、夫婦で協力して子育てに取り組める環境を整備するために創設されました。

産後パパ育休との関係性

出生時育児休業給付金は、「産後パパ育休」とも呼ばれる出生時育児休業制度と密接に関連しています。産後パパ育休を取得した従業員は、要件を満たすと「出生時育児休業給付金」が支給されます。

編集部の田中さん(仮名)は昨年第一子を出産した際、夫が産後パパ育休を3週間取得しました。「出産直後は体力的にも精神的にも本当に大変な時期でした。夫が側にいてくれることで、安心して休むことができ、また育児についても一緒に学び、実践することができました。この経験があったからこそ、子どもが生後6ヶ月になる前から幼児教育について真剣に検討することができたんです」と振り返ります。

支給額と計算方法

基本的な支給額

出生時育児休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)×67%」で算出されます。

計算例

  • 月給30万円の場合
  • 休業開始時賃金日額:30万円÷30日=10,000円
  • 産後パパ育休を28日間取得した場合
  • 支給額:10,000円×28日×67%=187,600円
月給休業開始時賃金日額28日間の支給額
25万円8,333円約156,000円
30万円10,000円約187,600円
35万円11,667円約218,800円
40万円13,333円約250,000円

支給額の上限

育児休業給付金・出生後休業支援給付金には、日額ベースの上限があります。2025年4月1日時点で15,690円/日(毎年8月1日に改定)となっています。

2025年4月からの制度拡充:手取り10割相当へ

出生後休業支援給付金の創設

2025年4月からは新たに「出生後休業支援給付金」が創設され、育児休業給付金と合わせて受給すると、最大28日間は賃金額面の80%(手取りで10割相当)の給付金を受給できるようになります。

この制度により、従来の67%の給付に加えて13%が上乗せされ、合計80%の給付率となります。さらに、社会保険料免除・非課税を加味すると、実質的に手取りベースで10割相当になるよう設計されています。

支給要件

出生後休業支援給付金を受給するためには以下の2点を満たす必要があります。① 被保険者が、対象期間に、同一の子について、出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休または育児休業給付金が支給される育児休業を通算して14日以上取得したこと。② 被保険者の配偶者が、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと

重要なポイント

  • 夫婦ともに14日以上の育児休業取得が必要
  • ひとり親や配偶者が自営業の場合は夫婦取得要件なし
  • 最大28日間の支給

支給要件の詳細

基本的な受給要件

出生時育児休業給付金を受給するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります:

要件項目詳細内容
雇用保険加入雇用保険の被保険者であること
勤務実績休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)完全月が12ヶ月以上あること
休業期間中の就業制限休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であること
有期雇用の場合子供の出生日から8週間を経過する日の翌日から6ヶ月を経過する日までに、労働契約期間が満了することが明らかでないこと

対象者

雇用保険の被保険者であることが前提となるため、以下の方は対象外となります:

  • 自営業・フリーランス
  • 特別職の公務員
  • 雇用保険に加入していない短時間労働者

編集部では実際に数組の夫婦にヒアリングを行いましたが、共働き世帯の多くが「制度を知らなかった」「申請方法が分からなかった」という状況でした。特に、幼児教育に熱心な家庭ほど、経済的な計画を立てる上でこの制度を活用したいという声が多く聞かれました。

申請手続きの流れ

申請期間と締切

出生時育児休業給付金の申請期間は、子どもの出生日の8週間後の翌日から起算して2カ月後の月末までとなります。

申請期間の計算例 子どもの出生日が2025年4月15日の場合:

  1. 8週間後:2025年6月10日
  2. 申請期限:2025年8月31日まで

申請の流れ

産後パパ育休を取得した社員が出生時育児休業給付金を受け取るには、まず、出生時育児休業給付金の申し出を行うことになります。

ステップ1:事前申出

  • 休業開始の原則2週間前までに会社へ書面で申出
  • 分割取得の場合は1回目の申出時にまとめて申請

ステップ2:必要書類の準備 従業員が準備する書類:

  • 母子健康手帳の出生届出済証明のコピー
  • 世帯全体の住民票(写し)
  • 出生時育児休業申出書のコピー

会社が準備する書類:

  • 育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書
  • 賃金台帳、労働者名簿
  • 出勤簿またはタイムカード

ステップ3:ハローワークへの提出 事業所の所在地を管轄しているハローワークに提出します

ステップ4:支給決定 支給が決定した場合、指定口座に支給決定後約1週間で振り込みが行われます

社会保険料免除のメリット

免除される保険料

産後パパ育休期間中は、以下の社会保険料が免除されます:

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料

休業期間中は労使双方の社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)が免除されます。この免除は、月の末日が育児休業期間中である場合、または月内に14日以上の育児休業を取得している場合に適用されます

免除の条件

免除対象条件
月額保険料月末に育休を取得していること、または同月中に14日以上の育休を取得していること
賞与保険料連続して1ヶ月を超える育休を取得していること

幼児教育を検討する家庭への実践的アドバイス

早期教育資金計画との関連性

幼児教育に関心の高い家庭では、0歳からの働きかけを重視される方も多いでしょう。出生時育児休業給付金は、まさにその重要な時期の経済的支援となります。

編集部の山田さん(仮名)は、第二子出産時に夫が4週間の産後パパ育休を取得し、給付金を活用して知育玩具の購入や赤ちゃん向けの音楽教室への参加費用に充てたそうです。「夫が育休を取ることで、二人で子どもの発達について学び、実践する時間が確保できました。給付金があることで、経済的な心配をせずに早期教育への投資もできたんです」と話しています。

復職後の幼児教育継続戦略

産後パパ育休期間中に夫婦で育児方針を話し合い、復職後の幼児教育プランを立てることは非常に重要です。給付金を活用して以下のような準備を進めることをお勧めします:

0-3ヶ月期の準備

  • ベビーマッサージ用品の購入
  • 感覚統合を促進する玩具の選定
  • 絵本の読み聞かせ環境の整備

4-6ヶ月期への準備

  • 離乳食と脳発達を考慮した栄養計画
  • 運動能力向上のための環境づくり
  • 音楽教育の基盤整備

分割取得の戦略的活用法

分割取得のメリット

産後パパ育休は最大2回まで分割して取得できます。この特徴を活用することで、より効果的な育児参加が可能になります。

分割取得の例

  • 1回目:出産直後の2週間(産褥期のサポート)
  • 2回目:生後1ヶ月後の2週間(生活リズム確立期)

幼児教育の観点からの分割活用

編集部で実施したアンケートでは、幼児教育に積極的な家庭の約8割が分割取得を希望していることが分かりました。その理由として以下が挙げられています:

  1. 発達段階に応じた関わり方の学習
    • 新生児期と乳児期で異なる刺激の与え方を実践
  2. 夫婦の育児スキル向上
    • それぞれの時期での課題に集中して取り組める
  3. 経済的計画の最適化
    • 必要な時期に集中して給付金を活用

企業の先進的な取り組み事例

民間企業の独自支援

流通大手であり、全国にショッピングモール、スーパーマーケット等を展開する流通大手イオンが育児休業を取得する社員に対し、最長で子が1歳になるまでの期間中、育休前の手取り額の実質100%を補償すべく会社独自の給付を行うことを決定しました

このような企業独自の支援制度と国の制度を組み合わせることで、より充実した育児環境を確保できる可能性があります。

企業選択への影響

幼児教育に関心の高い夫婦にとって、就職・転職先の企業選択において、育児支援制度の充実度は重要な判断材料となりつつあります。制度を最大限活用するためにも、事前に勤務先の制度を確認しておくことが大切です。

よくある質問と注意点

Q1: 夫婦ともに雇用保険に加入していない場合はどうなるか?

A: 一般被保険者または高年齢被保険者として雇用保険に加入している必要があります。フリーランス、自営業、特別職の公務員など、雇用保険の被保険者でない場合は対象外となります。

Q2: 休業中に少し働いた場合の取り扱いは?

A: 育児休業給付金の原則として、「休業中に一定以上働く日・時間があると、給付金が不支給になる」ルールがあります。具体的には10日以内(10日を超える場合は80時間以内)であれば給付対象となります。

Q3: 申請を忘れてしまった場合は?

A: 申請期限を過ぎると原則として給付を受けることができません。出産予定が分かった時点で、早めに勤務先の担当者と相談し、スケジュールを確認しておきましょう。

制度活用のための準備チェックリスト

幼児教育を見据えた出生時育児休業給付金の活用のために、以下の項目を事前に確認・準備しておきましょう:

妊娠判明時(妊娠初期)

  • [ ] 勤務先の育児休業制度の確認
  • [ ] 雇用保険加入状況の確認
  • [ ] 給与明細での賃金額の把握
  • [ ] 配偶者の勤務先制度の確認

妊娠中期(安定期)

  • [ ] 産後パパ育休の取得時期検討
  • [ ] 分割取得の必要性判断
  • [ ] 必要書類の準備開始
  • [ ] 幼児教育方針の夫婦での話し合い

妊娠後期(出産準備期)

  • [ ] 具体的な休業期間の決定
  • [ ] 勤務先への正式申出
  • [ ] 給付金の使途計画策定
  • [ ] 復職後の育児・教育計画立案

出産後

  • [ ] 速やかな申請手続き
  • [ ] 給付金受給の確認
  • [ ] 幼児教育プランの実行開始

まとめ:子どもの未来への投資として

出生時育児休業給付金は、単なる経済的支援制度を超えて、夫婦が協力して子育てに取り組み、早期からの幼児教育に専念できる環境を整える重要な制度です。

2025年4月からの制度拡充により、夫婦共に育児休業を取得しながら就業時の給与と同等額の経済的支援を受けることが出来るため、子育て世代にとって働きやすい環境作りに繋がります

編集部として多くの家庭を取材する中で感じるのは、この制度を活用して夫婦で育児に向き合った家庭ほど、その後の幼児教育への取り組みも積極的で、子どもの発達に対する意識も高いということです。

制度を最大限活用し、お子さんの健やかな成長と発達のために、夫婦で協力した子育てのスタートを切っていただければと思います。


出典・参考情報