読み聞かせの効果は実証済み!科学的研究が明かす子どもの成長への驚くべき影響

幼児
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読み聞かせとは、大人が子どもに対して本や物語を読み聞かせることです。読み手は本や物語の内容を声に出して朗読し、子どもはそれを聞くことで楽しみや学びを得ます。

幼児教育に携わる保護者にとって、読み聞かせは最も身近で取り組みやすい教育活動の一つです。特別な教材や高額な教室に通う必要がなく、図書館で借りた絵本一冊からでも始められる手軽さが魅力です。

私たち編集部でも、実際に多くの保護者の方から「読み聞かせを続けているけれど、本当に効果があるのか不安」という声をお聞きします。そこで今回は、科学的な研究データをもとに、読み聞かせが子どもに与える具体的な効果を詳しく解説いたします。

文部科学省も認める読み聞かせの教育効果

文部科学省では、読み聞かせの効果について継続的な調査研究を実施しています。平成25年の文部科学省の調査でも、小さいころに読み聞かせをしていた家庭の子どもは、学力が高い傾向にあるという研究結果が出ています。

特に注目すべきは、読み聞かせの効果が国語だけにとどまらないことです。小さい頃に読み聞かせを積極的に受けた小・中学生ほど学力が高いという結果が出ています。しかも、国語だけでなく読解力を必要とする算数や数学の学力も高いということです。

読み聞かせ期間と学力の関係を示すデータ

国立青少年教育振興機構の調査では、興味深い結果が明らかになっています。就学前から小学校低学年までの「家族から昔話を聞いたこと」、「本や絵本の読み聞かせをしてもらったこと」、「絵本を読んだこと」といった読書活動は、現在における「社会性」や「文化的作法・教養」との関係が強いことが分かっています。

脳科学で解明された読み聞かせの驚くべき効果

東北大学・川島隆太教授の研究成果

脳科学研究の第一人者である東北大学の川島隆太教授の研究により、読み聞かせが脳に与える影響が科学的に解明されています。

絵本の読み聞かせによって、前頭前野という脳のある部分の活動が抑制されていて、心地よい感情が湧いてきてリラックスした状態が誘発されていることが分かってきました。また、別の研究では、感情や情動に関わる部位である大脳辺縁系の一部が活動的になっていることも分かっています。

この研究結果は非常に興味深く、読み聞かせが単なる知識の詰め込みではなく、子どもの脳の発達に根本的な良い影響を与えていることを示しています。

親子関係への効果も実証

川島教授の山形県長井市との共同研究では、さらに驚くべき結果が明らかになりました。平均で週に2~3日、時間としては1回10~20分間、読み聞かせをしただけなのに、親子の愛着関係が強まったのです。

また、読み聞かせの時間が多いほど、母親の子育てに関するストレスが低くなっているらしいのです。特に、子どもが言うことを聞かないために嫌な気持ちになるといった子どもの行動に対して母親が感じるストレスが減るということも分かってきています。

読み聞かせが子どもに与える5つの効果

1. 語彙力の飛躍的向上

東北大学の川島教授を代表とする研究では、「読み聞かせをされた子は、されていない子と比べて3倍相当の語彙の伸びがみられた」という結果が明らかになりました。

語彙力向上のメカニズムは以下の通りです:

段階効果具体例
1. 音への慣れ子どもは言語のリズムや音の違いを学ぶことができます擬音語、擬態語の理解
2. 新語の習得新しい言葉やフレーズを聞いて覚えることができます日常会話にない語彙の獲得
3. 文法の理解語彙力や文法の理解が深まり、コミュニケーション能力が向上します正しい文章構造の習得

2. 想像力と創造性の育成

絵本の読み聞かせを通して、絵と言葉によって表現された世界に触れることで、現実の世界を超えたイメージの世界を楽しめるようになるとされています。

私たち編集部でも、読み聞かせを続けている家庭の子どもたちが、物語の続きを自分なりに考えて話してくれるようになったという報告を多く受けています。これは想像力が豊かに育っている証拠です。

3. 集中力の向上

デジタル絵本における「読み聞かせ」と「黙読」の集中度や理解度を比較した実験では、小学校低学年までの子どもは、一人で読む「黙読」より、声に出して呼んでもらう「読み聞かせ」のほうが「楽しさ」「理解」「集中」のすべての指標において高い数値を示したことが明らかになっています。

4. 読書習慣の形成

文部科学省が2004年に行った「親と子の読書活動等に関する調査」の結果読み聞かせをしてもらっていた期間が長い子どもほど読書量が多いという結果になりました。

読書習慣は学力向上に直結します。平成29年度「全国学力・学習状況調査」のグラフを見てわかるとおり、10分でも読書習慣がある子は成績が上がりやすいことがわかります。

5. 社会性と情緒の発達

読み聞かせをしてもらっている時の子どもの脳ではリラックスした状態となり、さらに、人間の情緒(喜怒哀楽)をコントロールする大脳辺縁系を発達させ、情緒豊かな人間に育つことが期待されます。

年齢別読み聞かせの始め方とポイント

0歳〜2歳:音とリズムを重視

新生児期や乳幼児期には、まだ言葉を理解することができないかもしれませんが、赤ちゃんは音やリズムに敏感です。この時期は内容の理解よりも、親の声を聞くことで安心感を得ることが重要です。

2歳〜6歳:語彙と表現の拡大

2歳くらいになると、言葉の理解力や注意力が発達し始めます。この時期には、絵本や短い物語の本を読み聞かせることで、子どもが言葉の意味を理解し、物語の展開やキャラクターの感情に興味を持つようになります。

私たち編集部の体験では、この時期の子どもたちは特に繰り返しのある物語や、身近な生活を描いた絵本に強い関心を示します。

小学生以降:読解力と思考力の発展

幼稚園や小学校入学後も、読み聞かせを続けることで読解力や想像力、共感力を養うことができます。

効果的な読み聞かせのコツとテクニック

基本的な読み方

要素ポイント効果
声のトーン子どもが安心して聞くことができる声のトーンを心がけましょうリラックス効果
読み方ゆっくり・はっきり読むことも大切です理解度向上
演技あまり大げさに演じ過ぎると内容が入ってこなくなってしまうことも集中力維持

環境づくりのコツ

子どもから絵本の絵がよく見えるように、読み聞かせを行う環境や絵本の持ち方に配慮しましょう。照明や座る位置、絵本の角度など、細かな配慮が読み聞かせの効果を高めます。

子どもの反応への対応

読み聞かせをしている途中で、子どもがそのページで感じたことや自分の思いを伝えてくれることがあると思います。そのとき、子どもの言動を遮ることだけはしないであげてください。

子どもからの質問や感想は、理解度を深めるチャンスです。私たち編集部でも、そうした対話を通じて語彙力が飛躍的に向上した事例を多く見てきました。

読み聞かせで注意すべきポイント

無理は禁物

「とにかく毎日続けなければ」という義務感にかられて読み聞かせをしていると、その時間がストレスとなり、その気持ちは子どもにも伝わってしまうものです。

子どものペースを尊重

子どもは集中できる時間が短く、読み聞かせに慣れていないお子さんは途中で飽きてしまうこともしばしばあります。最初は絵本を楽しく集中して見ていてくれていても、ふと違う所に目がいってしまう……なんてこと、よくありますよね。

こんなときは無理に続けず、子どものペースに合わせることが大切です。

読み聞かせの効果を最大化する方法

継続の重要性

なお、語彙力を豊かにするためには、読み聞かせを定期的に行うのが望ましいとされています。重要なのは完璧を目指すことではなく、細く長く続けることです。

研究で実証された最適な頻度

平均で週に2~3日、時間としては1回10~20分間、読み聞かせをしただけなのに、親子の愛着関係が強まったという研究結果は、多忙な現代の保護者にとって希望的なデータです。

毎日でなくても、週に数回、短時間でも継続することで十分な効果が期待できるのです。

質を重視したアプローチ

要素推奨方法避けるべきこと
本選び子どもの興味に合わせる大人の都合だけで選ぶ
時間帯子どもが落ち着いている時疲れているときの無理強い
環境静かで明るい場所テレビなどの雑音がある場所

読み聞かせが育む「確かな学力」

文部科学省が提唱する「確かな学力」とは、知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたものです。

読み聞かせは、この「確かな学力」の基盤となる読書習慣を形成します。学習習慣や生活習慣の指導など、他にも大事なことはありますが、まずは「読書習慣の定着」が大切とされています。

親にとってのメリットも見逃せない

ストレス軽減効果

東北大学の川島教授と山形県長井市との共同研究では、8週間の読み聞かせの前後では、親の感じるストレスが軽減しているとの結果が出ました。

親子の絆の深まり

絵本の世界を親と子どもで一緒に楽しむことで、同じ時間を過ごしながら同じ体験を共有します。添い寝をしながら、あるいはお子さんをひざの上に座らせて行う読み聞かせの時間は、親子の信頼を深める大切なコミュニケーションとなるのです。

私たち編集部でも、読み聞かせを続けている保護者の方から「子どもとの関係が深まった」「子どもが素直に話を聞くようになった」という報告を数多くいただいています。

現代の課題:デジタル時代の読み聞かせ

スクリーンタイムとの付き合い方

世界的に子どもたちのスクリーンタイムが増加して、子どもの近視の増加や体力の低下、ゲーム依存やネット依存などの問題を指摘する医学研究が増えています。

このような状況だからこそ、読み聞かせの価値が再評価されています。

デジタル絵本の活用も一つの選択肢

紙書籍の絵本と比べて、電子(デジタル)書籍においても、消極的な影響は見られないとの研究があります。重要なのは媒体ではなく、親子のコミュニケーションの時間を作ることです。

読み聞かせを成功させるための実践的アドバイス

始める前の心構え

  1. 完璧を求めない:子どもが途中で飽きても大丈夫
  2. 楽しむことを最優先:親が楽しんでいる様子が子どもに伝わる
  3. 継続を意識:短時間でも続けることが重要

図書館の活用法

図書館は読み聞かせのパートナーです。司書の方に相談すれば、子どもの年齢や興味に応じた絵本を推薦してもらえます。また、多くの図書館では読み聞かせ会も開催されているので、参考にしてみてください。

読み聞かせの記録をつける

どんな本を読んだか、子どもがどんな反応を示したかを簡単に記録しておくと、成長の過程が見えて励みになります。また、似たような本を選んだり、子どもの好みの傾向を把握したりするのにも役立ちます。

まとめ:読み聞かせは子どもの未来への投資

読み聞かせの効果は、単なる教育効果にとどまりません。語彙力向上、想像力育成、親子関係の深まり、そして将来の学力向上まで、幅広い効果が科学的に実証されています。

本の読み聞かせの効果は、誰が読み聞かせても一律というわけではなく、母親に読み聞かせをしてもらっている時が一番子どもの集中度が高く、ポジティブな表情を見せる頻度が高く、子どもの脳活動の状態が一番安定していて、良好な脳の発達が期待されるという研究結果が示すように、親子の読み聞かせには特別な意味があります。

毎日の忙しい生活の中で、読み聞かせの時間を作るのは大変かもしれません。しかし、週に2〜3回、1回10〜20分という無理のない範囲でも、継続することで確実に効果が現れます。

子どもの未来のために、そして親子の絆を深めるために、今日から読み聞かせを始めてみませんか。図書館で一冊の絵本を手に取ることから、豊かな親子時間が始まります。


参考文献・出典

  • 文部科学省「親と子の読書活動等に関する調査」
  • 東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授研究
  • 国立青少年教育振興機構「子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究報告書」
  • 「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」(2014年)
  • その他各種学術研究論文