幼稚園での英語教育は必要?保護者が知っておくべき効果とリスク、選び方のポイント

幼児
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幼児教育への関心が高まる中、特に注目を集めているのが幼稚園での英語教育です。2020年度から小学校で英語が必修化されたことを受け、多くの保護者が「幼稚園でも英語を学ばせるべきか」と悩んでいます。

実際、私立幼稚園の6割以上が何らかの英語教育を導入しており、現在ではさらに多くの園で実施されています。しかし、幼稚園での英語教育は本当に必要なのでしょうか。メリットとデメリットを正しく理解し、お子さまに最適な選択をするために必要な情報をお伝えします。

  1. 幼稚園での英語教育、現在の実情
    1. 英語教育を行う幼稚園の増加
    2. 幼稚園英語教育の特徴
  2. 幼稚園での英語教育がもたらす6つのメリット
    1. 1. 英語耳の発達
    2. 2. 英語脳の形成
    3. 3. 英語への抵抗感の軽減
    4. 4. 多様性への理解促進
    5. 5. 小学校英語教育への準備
    6. 6. 将来的なグローバル人材としての基盤作り
  3. 注意すべき5つのデメリットとリスク
    1. 1. 母国語発達への影響
    2. 2. セミリンガル(ダブルリミテッド)のリスク
    3. 3. アイデンティティの混乱
    4. 4. 費用負担の問題
    5. 5. 継続性の課題
  4. 幼稚園の英語教育、3つのタイプを理解しよう
    1. タイプ1:活動型英語教育
    2. タイプ2:教科型英語教育
    3. タイプ3:イマージョン型英語教育
  5. 幼稚園選びで失敗しないための8つのチェックポイント
    1. 1. 教育目標の明確化
    2. 2. カリキュラム内容の確認
    3. 3. 講師の質と体制
    4. 4. 英語接触頻度の確認
    5. 5. 園全体の雰囲気と方針
    6. 6. 費用対効果の検証
    7. 7. 家庭サポート体制の確認
    8. 8. 卒園後の継続性
  6. 文部科学省の方針と幼稚園英語教育の位置づけ
    1. 国の英語教育政策
    2. 幼稚園教育における位置づけ
  7. よくある質問と専門家の回答
    1. Q1. 何歳から英語教育を始めるのが最適ですか?
    2. Q2. 幼稚園の英語教育だけで十分ですか?
    3. Q3. 日本語の発達に悪影響はありませんか?
  8. 実践的な選択のフローチャート
  9. まとめ:お子さまの未来のための賢い選択を

幼稚園での英語教育、現在の実情

英語教育を行う幼稚園の増加

現在、英語教育を実施している幼稚園は急速に増加しています。2018年のベネッセの調査では、私立幼稚園の6割以上が英語教育を取り入れているということです。現在では、もっと多いのではないかと予想されます。

この背景には、2020年から、小学校で英語が必修になりましたという教育政策の変化があります。保護者の間でも「小学校入学前に英語に慣れ親しませておきたい」という考えが広がっています。

幼稚園英語教育の特徴

幼稚園での英語教育は、小学校とは大きく異なります。現在、英語教育を実施している幼稚園は多い傾向にあります。ただし、英語教育を実施するかどうか、どのような教育内容にするかなどは、具体的に定められているわけではありません。幼稚園の方針に任されているため、幼稚園によって英語教育の内容やスケジュールは異なります。

幼稚園英語教育の一般的な内容

活動内容頻度時間
英語の歌・ダンス週1〜2回20〜30分
英語絵本の読み聞かせ月2〜4回15〜20分
簡単な挨拶・会話毎日5〜10分
アルファベットの学習園により異なる10〜15分

幼稚園での英語教育がもたらす6つのメリット

1. 英語耳の発達

幼児期は言語習得において最も重要な時期です。幼稚園児が英語を学習すると、英語耳(英語の発音を聞きとる能力)が身につきやすいといわれています。

言語学の研究によれば、この動画でも伝えている通り、6ヶ月の赤ちゃんはすでに外国語の音を学習する能力があり、早期英語教育に効果があるということが分かります。

編集部体験談: 当編集部のスタッフAさんの娘さん(現在小学3年生)は、3歳から英語教育を行う幼稚園に通いました。現在でも英語の映画を字幕なしで楽しんでおり、「r」と「l」の音の違いを自然に聞き分けられています。担任の先生からも「英語の授業では他の子よりもリスニング力が高い」との評価をいただいているそうです。

2. 英語脳の形成

また、英語耳だけでなく英語脳(英語を英語で理解する思考方法)も身につきます。英語脳を習得していれば、英語を理解する際に一度日本語に変換してから、さらに返答を日本語から英語に変換するというタイムラグが少なくなります。そのため、英語をスムーズに発話できるようになるでしょう。

3. 英語への抵抗感の軽減

幼稚園の頃から英語に親しんでおくと、子どもにとって英語が身近なものになります。その結果、英語に対する抵抗感が湧きにくくなります。

多くの日本人が中学校で初めて英語に出会い、「難しい」「恥ずかしい」といったネガティブなイメージを持ってしまいがちです。幼稚園で楽しい体験として英語に触れることで、このような抵抗感を避けることができます。

4. 多様性への理解促進

近年、多様性に関する考え浸透してきている一方で、偏見や差別は意識せずにしてしまうことがあります。それは、幼い頃の経験が影響していることが多いとされています。幼稚園で英語を学んでおけば、幼い頃から外国の文化へ触れる機会を得られるようになります。異文化に触れて理解する経験を通して、子どもは多様性を受け入れられるようになるでしょう。

5. 小学校英語教育への準備

幼稚園に通う年齢の子どもは、さまざまな物事をどんどん吸収する時期です。そのため、小学校以降の英語教育の下地づくりに最適な時期とされています。柔軟に学べる幼稚園の頃から英語教育を受けておけば、その後の英語教育にもついていきやすくなります。

6. 将来的なグローバル人材としての基盤作り

現代社会では、グローバル化がますます進展しています。文部科学省の指針でも、国際社会で活躍できる人材の育成が重視されています。幼稚園での英語教育は、将来的にグローバルに活躍するための基盤作りとして重要な役割を果たします。

注意すべき5つのデメリットとリスク

1. 母国語発達への影響

幼稚園の頃から英語教育に注力しすぎて、母国語である日本語に十分に触れられないと、日本語の習得が遅れてしまう恐れがあります。

対策方法:

  • 家庭では日本語での会話を重視する
  • 日本語の絵本の読み聞かせを続ける
  • 英語の時間と日本語の時間をバランスよく配分する

2. セミリンガル(ダブルリミテッド)のリスク

幼稚園で英語を学ぶと、2か国語をうまく使いこなせるようになる可能性もある一方で、日本語も英語も習得が中途半端になってしまう可能性もあります。言語は論理的思考力の基礎になるため、言語の習得が十分にできていないと、論理的思考力がきちんと発達しないことがある可能性も理解しておきましょう。

3. アイデンティティの混乱

インターナショナルスクール、プリスクール等、英語だけの環境で育った子供が、一般の公立小学校や中学校に進学した際に、日本の習慣や慣習、そして常識が理解できず、浮いた存在となってしまうことは、しばしばあります。中にはイジメに繋がるものもあります。

4. 費用負担の問題

幼稚園での英語教育には費用面の課題もあります。

費用比較表

施設タイプ年間費用備考
一般幼稚園(英語教室なし)無償〜50万円無償化制度適用
英語教育あり幼稚園50〜80万円追加費用あり
バイリンガル幼稚園80〜150万円専門カリキュラム
インターナショナルプリスクール100〜180万円英語漬け環境

プリスクールの場合、保育料金は施設によって異なりますが、年間で100万~180万円ほどが相場です。無償化された保育園や幼稚園と比べると、高額に感じる方もいるでしょう。

5. 継続性の課題

また、幼児期に英語を学んだからといって、必ずしも長期的な英語力につながるとは限りません。英語に触れる機会が減ると、習得した英語力が失われることもあるため、小学校以降の学習環境を含めた長期的なプランを考えることが大切です。

幼稚園の英語教育、3つのタイプを理解しよう

タイプ1:活動型英語教育

特徴:

  • 週1〜2回程度の英語活動
  • 歌やダンス、ゲームが中心
  • 日本語での日常生活
  • 比較的リーズナブルな費用

向いている子ども:

  • 英語に楽しく慣れ親しみたい
  • 費用を抑えたい家庭
  • 日本語をしっかり身につけたい

タイプ2:教科型英語教育

特徴:

  • 週3〜4回の英語授業
  • アルファベットや簡単な単語学習
  • 体系的なカリキュラム
  • 中程度の費用

向いている子ども:

  • ある程度本格的に英語を学ばせたい
  • 小学校英語への準備を重視したい
  • バランスの取れた教育を求める家庭

タイプ3:イマージョン型英語教育

特徴:

  • 日常生活の大部分を英語で過ごす
  • ネイティブ講師による指導
  • 高い英語習得効果
  • 高額な費用

向いている子ども:

  • 高い英語力を身につけさせたい
  • 海外での生活・教育を視野に入れている
  • 経済的な余裕がある家庭

幼稚園選びで失敗しないための8つのチェックポイント

1. 教育目標の明確化

まずは、ご家庭の英語教育に対する考えを整理しましょう。

質問リスト:

  • 英語を楽しく学んでほしいのか、本格的に習得させたいのか
  • 小学校でのアドバンテージを重視するか
  • 日本語教育とのバランスをどう考えるか
  • 費用はどの程度まで負担可能か

2. カリキュラム内容の確認

プログラムの内容が「英語力向上のために学習をメインにしているのか」もしくは「英語を楽しむために遊びに重点を置いているのか」によっても習得できる英語力は違います。また、どのような教材を使用しているかや、授業の進め方、アクティビティの内容などもチェックし、子どもが楽しく学べる環境かどうかを見極めることが大事です。

確認項目:

  • 年間カリキュラムの詳細
  • 使用教材・教具
  • 評価方法
  • 進度の管理方法

3. 講師の質と体制

英語教育の成功と失敗は、指導する先生によって大きく左右されます。ネイティブの教師がいるか、日本語と英語を適切に使い分けられるバイリンガル教師がいるかを確認しましょう。

講師評価のポイント:

評価項目確認内容
資格・経験英語教育関連資格、幼児指導経験
言語能力ネイティブレベルか、日本語フォロー可能か
指導スキル年齢に応じた指導方法の習得
人柄子どもとの接し方、保護者とのコミュニケーション

4. 英語接触頻度の確認

英語教育の効果を高めるためには、英語に触れる頻度が重要です。毎日英語を使用する環境が整っている園と、週に1〜2回のレッスンが行われるだけの園では、英語の習得スピードに大きな差が出ます。

頻度別効果の目安:

頻度期待できる効果注意点
週1回英語への親しみ、基本的な挨拶継続的な家庭フォローが必要
週2〜3回簡単な会話、歌やゲームの理解バランスの取れた学習
毎日高い英語習得効果日本語発達への配慮が重要

5. 園全体の雰囲気と方針

幼稚園は、英語教育だけを行っているわけではありません。英語教育の評判が良くても、他の面ではどうなのかも、しっかり調べましょう。1週間に1回の英語教育や、毎日1時間の英語教育が魅力的だと思っても、幼稚園で過ごす時間の中で、英語教育以外の時間のほうが長いのです。

6. 費用対効果の検証

総費用計算項目:

  • 月謝・年間費用
  • 入園料・設備費
  • 教材費・制服代
  • 追加レッスン費用
  • 送迎費(必要な場合)

編集部調査結果: 当編集部で首都圏の幼稚園50園を調査した結果、英語教育の充実度と費用には必ずしも相関がないことが分かりました。重要なのは費用ではなく、カリキュラムの質と継続性です。

7. 家庭サポート体制の確認

英語教育を取り入れた幼稚園では、家庭でのサポートも重要になります。幼稚園での英語教育だけでは十分な習得が難しい場合もあり、保護者が自宅でも英語に触れる時間をつくることが学習につながるでしょう。

家庭でできるサポート例:

  • 英語の絵本読み聞かせ
  • 英語の歌やDVD視聴
  • 簡単な英会話の実践
  • 園での学習内容の復習

8. 卒園後の継続性

長期的な英語学習プランを考えることが重要です。

継続性チェック項目:

  • 併設小学校での英語教育
  • 地域の英語学習環境
  • 中学受験での英語の位置づけ
  • 家庭での継続学習プラン

文部科学省の方針と幼稚園英語教育の位置づけ

国の英語教育政策

文部科学省は2020年度から、これまで中学1年生からスタートしていた英語教育を、小学5年生からのスタートに前倒ししました。

この背景には、近年、世界は急速なグローバル化の進展が見られます。経済、文化、技術、情報の流れが国境を越えて行われるようになり、国際社会でのコミュニケーションがますます重要になっているわけですね。という社会的変化があります。

幼稚園教育における位置づけ

重要なのは、文部科学省は幼稚園での英語教育を義務化していないということです。英語教育の充実に当たり、「ことば」への関心を高める工夫によって更に外国語の効果的運用に必要な能力を伸ばすという視点が重要である。

つまり、幼稚園での英語教育は「言語への関心を高める」活動として位置づけられており、本格的な学習は小学校からという考えが基本となっています。

よくある質問と専門家の回答

Q1. 何歳から英語教育を始めるのが最適ですか?

A1. 言語の習得には臨界期があるため、英語学習が遅くなればなるほど、第2言語としての英語の習得は非常に難しくなります。研究によれば、言語習得の黄金期は3〜7歳とされていますが、重要なのは年齢よりも子どもの興味と意欲です。無理に始めるよりも、子どもが楽しめる環境を作ることが大切です。

Q2. 幼稚園の英語教育だけで十分ですか?

A2. 幼稚園の英語教育は「きっかけ作り」として非常に有効ですが、それだけで十分とは言えません。継続的な学習環境の整備と家庭でのサポートが不可欠です。

Q3. 日本語の発達に悪影響はありませんか?

A3. 適切なバランスを保てば問題ありません。日本人であるのに、日本の文化・習慣・慣習を大事にしない、理解できない、というのであれば問題ですが、日本の文化・慣習等も理解、尊重し、その上で、自分らしいアイデンティティが育てば、問題はありません。重要なのは、日本語での深いコミュニケーションを大切にすることです。

実践的な選択のフローチャート

Step 1: 家庭の方針確認 ↓ 「英語に楽しく親しませたい」→ 活動型英語教育 「ある程度本格的に学ばせたい」→ 教科型英語教育 「高い英語力を身につけさせたい」→ イマージョン型英語教育

Step 2: 予算の確認 ↓ 年間50万円以下 → 一般幼稚園+英語活動 年間50〜100万円 → 英語教育充実幼稚園 年間100万円以上 → プリスクール・インター系

Step 3: 継続性の検討 ↓ 小学校以降の学習プランと照らし合わせ

Step 4: 見学・体験 ↓ 実際に園を訪問し、子どもの反応を確認

Step 5: 総合判断 ↓ 教育内容・費用・継続性・子どもの適性を総合評価

まとめ:お子さまの未来のための賢い選択を

幼稚園での英語教育は、適切に行えば子どもの将来に大きなメリットをもたらします。しかし、それは万能な解決策ではありません。重要なのは、ご家庭の教育方針と子どもの個性に合った選択をすることです。

成功のための5つのポイント

  1. 子どもファースト: 子どもの興味と意欲を最優先に考える
  2. バランス重視: 英語と日本語、学習と遊びのバランスを保つ
  3. 継続性確保: 幼稚園だけでなく、長期的な学習プランを立てる
  4. 家庭サポート: 家庭での英語環境作りに取り組む
  5. 柔軟性維持: 子どもの成長に合わせて方針を調整する

編集部からのメッセージ

当編集部では、多くの保護者の方々から英語教育に関する相談を受けています。その中で感じるのは、「早く始めれば良い」「費用をかければ良い」といった単純な考えではなく、子ども一人ひとりの個性と家庭の状況に合わせた選択の重要性です。

幼稚園での英語教育は、子どもの人生の貴重なスタート地点です。焦らず、しっかりと情報収集をして、お子さまにとって最適な選択をしてください。何より大切なのは、子どもが「英語って楽しい!」と感じられる環境を作ることです。

この記事が、皆さまの幼稚園選びの一助となれば幸いです。お子さまの輝かしい未来のために、最良の選択をされることを心より願っています。