保育園と家庭でしつけ – 一貫性のある指導で子どもの成長を支える

幼児
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幼児期は人格形成の基盤となる大切な時期です。この重要な時期に、保育園と家庭が連携してしつけを行うことは、子どもの健やかな成長にとって欠かせません。しかし、実際にはどのように保育園と家庭で連携を取り、一貫性のあるしつけを実現していけばよいのでしょうか。

しつけとは何か?正しい理解から始めよう

しつけの本来の意味

「躾」という漢字は「身」を「美」しくと書きます。これは子どもが社会の中で美しく生きていけるよう、基本的な生活習慣や社会性を身につけさせることを意味しています。しつけとは「叱ること」ではなく「伝えること」「教えてあげること」なのです。

現代では、しつけを厳しい訓練や強制的な指導と捉える保護者もいらっしゃいますが、本来のしつけは愛情に基づいた温かい指導です。しつけとは本来訓練のような「手段」の話ではなく、『子どもが幸せに生活できるための行動習慣を育てること』です。

編集部体験談:しつけに対する意識の変化

編集部メンバーのAさんは、第一子の時「しつけ=厳しく叱ること」だと思い込んでいました。しかし、保育園の先生との面談で「しつけは愛情を伝えることから始まります」と教わり、意識が大きく変わったといいます。「子どもの将来を考えた時、今何を伝えるべきかを考えるようになりました」とAさんは振り返ります。

保育園でのしつけの特徴と効果

集団生活で身につく社会性

保育園は子どもたちが初めて経験する「小さな社会」です。保育現場において、しつけは子どもたちの成長を促すための基盤となります。しつけは、子どもが集団生活を送る中で必要なマナーやルールを学ぶ手助けをし、社会性を身につける重要な要素です。

保育園では以下のような場面でしつけが自然に行われています:

  • 朝の挨拶と身支度
  • 食事のマナーと片付け
  • 友達との関わり方
  • おもちゃの共有と順番待ち
  • 安全な遊び方

発達段階に応じた指導

保育園では子どもの発達段階を理解した保育士が、年齢に適したしつけを実践しています。子どもの発達や能力の特性は年齢によって異なるため、「ねらい」「内容」はそれぞれ1歳以上3歳未満児、3歳以上児で分けて示されています。

年齢しつけの重点具体的な内容
1-2歳基本的生活習慣挨拶、手洗い、食事の座り方
2-3歳自己抑制の芽生え順番を待つ、「ありがとう」を言う
3-4歳社会的ルール友達と仲良く遊ぶ、片付けをする
4-5歳自立と協調性集団での約束を守る、相手の気持ちを考える
5-6歳小学校準備時間を意識する、責任感を持つ

家庭でのしつけの重要性と特色

愛情を基盤とした継続的な指導

家庭は子どもにとって最も安心できる場所であり、しつけの出発点です。家庭基準の作り方は、「子どもがひとり立ちした時に、生きていきやすい習慣かどうか」を考えます。

家庭でのしつけには以下のような特徴があります:

  • 個別対応: 子ども一人ひとりの性格や発達に合わせた指導
  • 継続性: 毎日の生活の中での反復指導
  • 愛情の表現: 親子の絆を深めながらの指導
  • 価値観の伝承: 家族の大切にする価値観の共有

家庭で重視すべきしつけのポイント

  1. 基本的生活習慣の確立
    • 早寝早起き
    • 食事のマナー
    • 身の回りの整理整頓
  2. 感謝の心の育成
    • 「ありがとう」「ごめんなさい」が言える
    • 物を大切にする心
    • 家族への思いやり
  3. 自立心の育成
    • 自分のことは自分でする
    • 責任感を持つ
    • 最後まで諦めない心

保育園と家庭の連携の重要性

一貫性のあるしつけの効果

しつけにおいて一貫性は非常に重要です。保育士と保護者が同じルールや方針を持つことで、子どもは混乱せずにしつけを受け入れることができます。

連携が不十分な場合の問題点

保育園と家庭で異なるルールや指導方針があると、子どもは以下のような混乱を感じることがあります:

  • どちらが正しいのか分からない
  • 場所によって行動を変える必要がある
  • 大人への信頼感が揺らぐ
  • しつけの効果が薄れる

編集部体験談:連携の大切さを実感

編集部メンバーのBさんは、保育園では食事中の立ち歩きを注意されるのに、家庭では見過ごしていました。結果として、子どもは混乱し、どちらの場所でも落ち着いて食事ができなくなってしまいました。保育園の先生と相談し、家庭でも同じルールを設けることで、子どもの行動が改善されたといいます。

効果的な連携方法

情報共有の重要性

保育園と家庭の連携には、日常的な情報共有が欠かせません。保育園生活で見られた日々の成長や変化を伝えたり聞いたりすることで、保育士も保護者も新たな発見をすることができるでしょう。

具体的な連携方法

  1. 連絡帳の活用
    • 家庭での様子を具体的に記載
    • 保育園での成長を詳しく確認
    • 気になることは些細なことでも相談
  2. 送迎時のコミュニケーション
    • 朝の様子を保育士に伝える
    • お迎え時に園での様子を聞く
    • 短時間でも密なコミュニケーションを心がける
  3. 定期的な面談の活用
    • しつけの方針について相談
    • 家庭と園での子どもの様子を共有
    • 今後の指導方針を決める
  4. 園の行事やイベントへの参加
    • 保育参観で園でのしつけを確認
    • 他の保護者との情報交換
    • 園の方針への理解を深める

年齢別しつけ連携のポイント

0-2歳:基本的生活習慣の土台作り

この時期は生活リズムの確立が最重要です。保育園と家庭で以下の点を統一しましょう:

  • 食事と睡眠の時間
  • おむつ替えやトイレトレーニングの方法
  • 安全な遊び方の指導

3-4歳:社会性の芽生えを支える

自我が芽生え、友達との関わりが増える時期です:

  • 友達とのおもちゃの共有
  • 順番を待つことの大切さ
  • 「ありがとう」「ごめんなさい」の使い方

5-6歳:小学校準備と自立心の育成

小学校入学を見据えた指導が重要になります:

  • 時間を意識した行動
  • 最後まで話を聞く姿勢
  • 自分の気持ちを言葉で表現する力

しつけにおける具体的な指導方法

効果的な伝え方

「理由を添えて言う」ということですことが重要です。単に「ダメ」と言うのではなく、なぜダメなのかを子どもが理解できるように説明しましょう。

例:

  • ❌「走ったらダメ」
  • ⭕「廊下を走ると転んでケガをするから、歩きましょう」

褒めることの重要性

しつけは叱ることだけではありません。良い行動を見つけて積極的に褒めることで、子どもは自信を持って成長できます。

シーン褒め方の例
片付けができた時「きれいに片付けられて気持ちいいね」
友達に優しくした時「○○ちゃんに優しくできて素晴らしいね」
挨拶ができた時「元気な挨拶で気持ちがいいですね」

継続的な指導の重要性

大切なのは、今すぐ効果が出ると期待しないことです。今、言い続けていると、1年後2年後には必ず、実を結びます。

しつけは一朝一夕にできるものではありません。保育園と家庭が連携して、根気強く継続することが大切です。

保護者と保育士の役割分担

保護者の役割

  • 家庭での基本的生活習慣の確立
  • 愛情を基盤とした価値観の伝達
  • 保育園との情報共有
  • 一貫性のある指導

保育士の役割

  • 集団生活でのルールやマナーの指導
  • 発達段階に応じた専門的な指導
  • 保護者との連携とサポート
  • 子どもの成長の記録と共有

編集部体験談:役割分担の成功例

編集部メンバーのCさんは、朝の支度が遅い子どもについて保育園の先生と相談しました。家庭では時間に余裕を持った起床時間の設定、保育園では朝の支度の手順を視覚的に示すことで、子どもが自主的に行動できるようになったそうです。

よくある課題と解決方法

課題1:家庭と保育園で異なる反応をする子ども

家では甘えん坊なのに、保育園ではしっかりしている、またはその逆のケースがあります。

解決方法:

  • これは正常な発達の一部として理解する
  • 両方の様子を共有し、総合的に成長を評価する
  • それぞれの環境での子どもの頑張りを認める

課題2:保護者と保育士の指導方針の違い

厳しさの程度や重視する点が異なることがあります。

解決方法:

  • 定期的な話し合いの場を設ける
  • 子どもの最善の利益を第一に考える
  • お互いの考えを尊重しながら歩み寄る

課題3:しつけの効果が見えない

指導を続けているのに、なかなか改善が見られない場合。

解決方法:

  • 長期的な視点で子どもの成長を見守る
  • 小さな変化も見逃さず、記録に残す
  • 指導方法を見直し、子どもに合った方法を探す

現代社会におけるしつけの課題

デジタル時代の新しい課題

現代の子どもたちは、デジタル機器に囲まれて成長しています。このような環境下でのしつけには新しい視点が必要です:

  • スクリーンタイムの管理
  • オンラインでのマナー
  • リアルなコミュニケーションの重要性

多様な家庭環境への配慮

現代社会では様々な家庭環境があります。保育園では以下の点に配慮したしつけが求められています:

  • 働く保護者への理解とサポート
  • 文化的背景の違いへの配慮
  • 個々の家庭の事情に応じた柔軟な対応

子どもの成長を支えるために

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を意識したしつけ

厚生労働省の保育所保育指針では、「幼児期の終わりまでに育って欲しい姿」を示しています。10の項目に分けて記載されていることから「10の姿」と呼ばれ、幼稚園、保育所、認定こども園で共通の指針となっています。

10の姿とは:

  1. 健康な心と体
  2. 自立心
  3. 協同性
  4. 道徳性・規範意識の芽生え
  5. 社会生活との関わり
  6. 思考力の芽生え
  7. 自然との関わり・生命尊重
  8. 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
  9. 言葉による伝え合い
  10. 豊かな感性と表現

これらの姿は達成目標ではなく、保育園と家庭が連携して育んでいく方向性を示しています。

長期的な視点での成長支援

しつけは即効性を求めるものではありません。子どもの将来を見据え、長期的な視点で取り組むことが大切です:

  • 小学校入学後の学校生活への準備
  • 社会人として必要な基礎的な力の育成
  • 人として大切な価値観の形成

専門機関との連携

必要に応じた外部サポートの活用

子どもの成長には個人差があります。しつけに関して特別な配慮が必要な場合は、専門機関との連携も重要です:

  • 発達相談センター
  • 子育て支援センター
  • 小児科医や臨床心理士
  • 地域の子育て相談窓口

障害のある園児などへの指導に当たっては、集団の中で生活することを通して全体的な発達を促していくことに配慮し、適切な環境の下で、障害のある園児が他の園児との生活を通して共に成長できるよう、特別支援学校などの助言又は援助を活用しつつ、個々の園児の障害の状態などに応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。

まとめ:一貫性のあるしつけで子どもの未来を支える

保育園と家庭でのしつけは、子どもの人格形成に大きな影響を与えます。一貫性のある指導により、子どもは安心して成長することができ、社会で生きていくための基礎的な力を身につけることができます。

成功の鍵は連携と継続

  • 保育園と家庭での密な情報共有
  • 一貫した指導方針の確立
  • 子ども一人ひとりに応じた柔軟な対応
  • 長期的な視点での根気強い指導

保護者の皆様へのメッセージ

しつけは決して一人で行うものではありません。保育園の専門的な知識と家庭の愛情豊かな環境が組み合わさることで、子どもは健やかに成長していきます。迷いや不安を感じた時は、遠慮なく保育園の先生に相談してください。

子どもたちの明るい未来のために、保育園と家庭が手を取り合って、温かく見守りながらしつけを進めていきましょう。一人ひとりの子どもが、自信を持って社会に羽ばたいていけるよう、私たち大人がしっかりと支えていくことが大切です。


本記事は、厚生労働省の保育所保育指針、幼児教育に関する研究論文、現役保育士へのインタビュー、編集部での実体験を基に作成しました。子育てに関するご質問やお悩みがございましたら、お住まいの地域の子育て支援センターや保育園にご相談ください。