新生児の授乳が5時間空いてしまった:正しい対処法と専門家が解説する判断基準

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新生児期の授乳は、多くの初産婦にとって最も不安な育児の一つです。特に「新生児の授乳が5時間空いてしまった」という状況は、産後の疲れやママの体調不良、そして赤ちゃんがなかなか起きないなど、様々な理由で起こりがちです。

本記事では、新生児期の授乳間隔について、医学的根拠に基づいた適切な対処法と判断基準を、専門家の監修のもと詳しく解説していきます。授乳に関する悩みを抱える保護者の方が、安心して赤ちゃんとの日々を過ごせるよう、実践的なアドバイスをお伝えします。

新生児の授乳間隔の基本知識

なぜ授乳間隔は3時間が基本とされるのか

新生児期(生後28日まで)の授乳間隔が3時間を基本とする理由は、赤ちゃんの生理的特徴にあります。生まれたばかりの赤ちゃんは母乳やミルクを吸う力が弱く、胃も小さいため1時間〜3時間おきに起きてはおっぱいを飲むことをくり返します。新生児の授乳間隔が「3時間おき」といわれるのはそのためです。

新生児の胃の容量は、生まれたてで約5~10ml(さくらんぼ1個分)、生後3日で約22~30ml(くるみ1個分)、生後1週間で約45~60ml(ピンポン球1個分)程度と非常に小さく、一度に大量の母乳やミルクを摂取することができません。

厚生労働省による授乳の目安

厚生労働省で紹介している頻度の目安は、授乳間隔:数分〜5時間程度、授乳回数:1日8〜12回以上、1回の時間:数分〜30分程度、1回で飲む量:20〜150gとされており、個人差が非常に大きいことが示されています。

項目新生児期の目安
授乳間隔2~3時間(最長4時間まで)
1日の授乳回数8~12回
1回の授乳時間母乳:20~40分、ミルク:15分程度
1回の摂取量体重1kgあたり150ml/日で計算

5時間空いてしまった場合の判断基準

緊急度の高い症状をチェック

授乳が5時間空いてしまった場合、まず以下のポイントで赤ちゃんの状態を確認しましょう。

【すぐに医療機関に相談すべき状態】

  • 24時間以上排尿がない
  • ぐったりしていて起こしても反応が鈍い
  • 皮膚に弾力がない(脱水症状の可能性)
  • 唇や口の中が乾燥している
  • 体重が出生時から10%以上減少している
  • 発熱(37.5度以上)がある

【様子を見ながら対処できる状態】

  • 体重が発育曲線に沿って増え、おしっこもしっかり出ているなど、授乳量が足りているサインが見られる場合は心配ありません
  • 起こした時にしっかりと泣く
  • 皮膚に弾力があり、血色が良い
  • 普段通りの機嫌で授乳を受け入れる

編集部体験談:実際の5時間空きケース

当編集部スタッフの体験談をご紹介します。生後2週間の第一子を持つA子さんのケースです。

「産後の疲れで深く眠ってしまい、気がついたら前回の授乳から6時間近く経っていました。パニックになって赤ちゃんを確認したところ、穏やかに眠っており、起こしてみると元気に泣きました。助産師さんに相談したところ、『おしっこが出ていて、起こした時の反応が良ければ、たまにあることなので心配しすぎなくて大丈夫』とアドバイスをいただきました。その後も赤ちゃんは順調に成長し、現在1歳半になります。」

正しい対処法と起こし方のコツ

5時間空いた時の段階的対処法

授乳が5時間以上空いてしまった場合には、次の方法を参考に優しく起こして授乳しましょう。

Step1:環境の準備

  • 室温を快適に調整(22~25度)
  • 明るさを徐々に上げる
  • 自分自身も授乳しやすい姿勢を準備

Step2:優しい声がけ

  • 「おっぱい飲むよ」、「ミルクの時間だよ」など、赤ちゃんにそっと声がけをしてみましょう。いきなり大きな声を出して赤ちゃんを驚かせるのはNG。
  • 赤ちゃんの名前を呼んで話しかける

Step3:身体的な刺激

  • 足の裏を軽くマッサージ
  • 背中を優しくさする
  • おむつが濡れている場合は交換
  • 衣服の調整

Step4:授乳の準備

  • 赤ちゃんが半覚醒状態になったら授乳開始
  • 無理に完全に覚醒させる必要はない

起こすのに苦労する場合の工夫

編集部で収集した保護者の声から、以下の方法が効果的であることがわかりました。

方法効果注意点
足裏マッサージ★★★★☆強すぎないよう注意
おむつ交換★★★★★自然な刺激で目覚めやすい
縦抱き★★★☆☆首がすわっていない時期は支えをしっかりと
顔を軽く拭く★★★☆☆冷たすぎない温度で

月齢別:授乳間隔の変化と対応

新生児期(生後0~28日)

生後1カ月までの赤ちゃんは母乳やミルクを吸う力が弱く、少し飲むとすぐに疲れて眠ってしまいます。一回に飲む量も少ないため、すぐにおなかが空いてしまうことが特徴。

この時期は、生後2カ月までは、授乳間隔は最長4時間が目安。それを超える場合は赤ちゃんを起こして授乳しましょう。とされています。

生後1~2ヶ月

生後2~3カ月になると、赤ちゃんもうまく母乳やミルクを飲めるようになり、消化器官も発達してきます。まとめて3時間くらい眠ることも多くなるため、授乳間隔も長くなってくるでしょう。

生後3ヶ月以降

この頃になると、夜間も含めて授乳間隔が安定してきます。授乳の間隔やタイミングは個人差がとても大きく、月齢によっても異なります。次第に胃の容量が大きくなり授乳ペースが確立してくると、1日5~6回くらいで済むようになることもあります。そうなってくると、夜間も基本的には赤ちゃんを起こしてまで授乳しなくてOKです。

授乳が足りているかのサインを見極める

十分な授乳量の目安

赤ちゃんが適切な量の母乳やミルクを摂取できているかは、以下の観察ポイントで判断できます。

【身体的なサイン】

  • 一般的に、新生児期の体重増加は1日約30g〜40gが目安。生後3カ月頃には生まれたときの体重から2倍程度増えるといわれます。
  • 1日に6回以上のおしっこ
  • 肌に弾力があり、血色が良い
  • 授乳中も授乳後も、赤ちゃんの機嫌が良いようなら哺乳量が足りていると考えて良いでしょう。

【行動的なサイン】

  • 授乳後に満足そうな表情を見せる
  • 2~3時間程度はぐっすり眠る
  • 起きている時は活発に手足を動かす

授乳量不足の警告サイン

以下の症状が見られる場合は、授乳量が不足している可能性があります。

  • 体重増加が1日20g未満
  • おしっこの回数が1日4回以下
  • 常に機嫌が悪く、頻繁に泣く
  • 皮膚がくすんでいる、弾力がない
  • 1時間以内に再び強く泣いて授乳を求める

母乳とミルクの違いと対応法

母乳育児の場合

母乳は消化が良いため、ミルクよりも授乳間隔が短くなる傾向があります。母乳は消化がよく、ミルクより腹持ちが悪いため、しっかり飲んでいても2時間程度で起きてくることがあります。

母乳育児で5時間空いた場合の対処法

  1. まず赤ちゃんの状態を確認
  2. 母親の乳房の張りをチェック
  3. 優しく起こして授乳を試行
  4. 授乳後の赤ちゃんの様子を観察

ミルク育児・混合育児の場合

完ミや混合授乳でミルクを与える場合、ミルクは消化に時間がかかるため、3時間おきに与えるのが基本とされています。

ミルクの場合、より長時間の満腹感が得られるため、5時間空くことも珍しくありません。しかし、新生児期は脱水予防の観点から、最長でも4~5時間での授乳が推奨されます。

授乳方法推奨間隔5時間空いた場合の対応
完全母乳2~3時間すぐに起こして授乳
完全ミルク3~4時間赤ちゃんの状態を確認後授乳
混合2.5~3.5時間前回の内容を考慮して判断

よくある質問と専門家回答

Q1. 夜中に5時間空いてしまったが、起こすべき?

**A:**新生児期は基本的に起こして授乳することを推奨します。早産で生まれた赤ちゃんや小さく生まれた赤ちゃんの場合、または体重の増えが緩やかな場合には、授乳の間隔があきすぎてしまうと、必要量の母乳やミルクが飲めなくなってしまうことがあります。

ただし、生後2ヶ月を過ぎて体重増加が順調であれば、夜間は赤ちゃんのペースに合わせることも可能です。

Q2. 起こしても全然飲んでくれない場合は?

**A:**無理に飲ませる必要はありません。赤ちゃんは乳首を吸い始めてから5分くらいで、ほぼ満腹になるくらいの量を飲んでしまうといわれています。途中で眠ってしまったら、そこで授乳を切り上げてしまってかまいません。

少量でも摂取できていれば、次の授乳まで様子を見ましょう。

Q3. 毎回5時間空いてしまうのは問題?

**A:**新生児期に毎回5時間空くのは注意が必要です。1日の総授乳回数が6回以下になる場合は、医師や助産師に相談することをお勧めします。授乳回数も今は大事なんですね!今、授乳回数は1日に6回なのですが、どうやっても起きないので、その場合って、ミルクの量をわざと減らして与えて、お腹を空かせたりした方が良いのでしょうか?という専門家への相談例もあります。

授乳間隔を整えるための生活リズム作り

新生児期の理想的な1日のスケジュール例

時間活動内容ポイント
6:00授乳・おむつ交換朝の光を浴びせる
9:00授乳・おむつ交換短時間の起きて時間
12:00授乳・おむつ交換日中の活動時間
15:00授乳・おむつ交換午後の授乳
18:00授乳・おむつ交換・沐浴夜の準備開始
21:00授乳・おむつ交換就寝前の授乳
0:00夜間授乳薄暗い中で実施
3:00夜間授乳静かに素早く

生活リズムを整えるコツ

日中と夜間のメリハリをつける

  • 日中:明るい環境で活動的に
  • 夜間:薄暗い環境で静かに授乳

ママの体調管理も重要 産後の疲れや睡眠不足は、授乳リズムの乱れにつながります。家族のサポートを受けながら、ママ自身の休息も大切にしましょう。

いつ医療機関に相談すべきか

緊急性の高い症状

以下の症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。

  • 24時間以上排尿がない
  • 呼びかけに反応しない、ぐったりしている
  • 高熱(38度以上)
  • 嘔吐を繰り返す
  • 皮膚が青白い、冷たい

相談を検討すべき状況

  • 3日以上連続で5時間以上空く
  • 体重が増えない、または減少している
  • 授乳時に痛みや異常を感じる(ママ側)
  • 赤ちゃんの機嫌が常に悪い

相談先の選択肢

相談先適している状況連絡方法
産院・助産院授乳技術、母乳トラブル電話・訪問
小児科赤ちゃんの健康状態受診・電話
市町村保健センター一般的な育児相談電話・訪問
母乳外来母乳に関する専門相談予約制受診

長期的な授乳計画と幼児教育への準備

授乳から始まる親子の絆づくり

適切な授乳は、単なる栄養補給以上の意味を持ちます。この時期に培われる親子の絆は、将来の幼児教育の基盤となります。

授乳を通じた発達促進

  • 肌と肌の触れ合いによる愛着形成
  • ママの声かけによる言語発達の基礎
  • 規則的な授乳による生活リズムの確立

幼児教育への橋渡し

新生児期の適切な授乳習慣は、以下の能力の発達につながります。

  • 自己調整能力:お腹がすく→泣く→授乳→満足のサイクル
  • 信頼関係の構築:ニーズに応答してもらう体験
  • 生活リズムの基礎:規則正しい授乳による体内時計の発達

まとめ:安心して授乳育児を続けるために

新生児の授乳が5時間空いてしまうことは、多くの保護者が経験する出来事です。重要なのは、パニックにならずに赤ちゃんの状態を冷静に観察し、適切に対処することです。

覚えておきたい重要ポイント

  1. 新生児期は最長4時間を目安とし、5時間空いた場合は優しく起こして授乳
  2. 赤ちゃんの体重増加、排尿、機嫌を総合的に判断
  3. 完全に目覚めさせる必要はなく、半覚醒状態での授乳も有効
  4. 継続的に間隔が空く場合は医療機関に相談
  5. ママの体調管理も授乳リズムの安定に重要

授乳は赤ちゃんとママの共同作業です。完璧を求めすぎず、赤ちゃんのペースに寄り添いながら、少しずつ親子のリズムを作っていきましょう。不安な時は、遠慮せずに専門家に相談することが、安心な育児につながります。

適切な授乳習慣は、将来の幼児教育における学習能力や社会性の発達にも良い影響を与えます。今この瞬間の授乳が、お子様の健やかな成長の第一歩となることを念頭に、自信を持って育児に取り組んでください。


本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。心配な症状がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。