「1歳半健診で指差しができないと言われた」「1歳半になるのにまだ指差しをしない」——この不安を抱えてこのページを開いた保護者の方へ。
まず最初に伝えたいのは、指差しができないこと単体で発達障害とは言えないということです。一方で「様子を見ましょう」だけでは不安が残ることも事実です。本記事では、指差しの種類と意味・本当に心配が必要な時の見分け方・今日から家でできる練習方法・相談先の選び方まで、保護者が実際に必要な情報を正確にまとめます。
指差しの「種類」を正しく理解する:なぜ健診で確認するのか
指差しが1歳半健診の重要チェック項目になっている理由は、単に「指が使えるか」を見るためではありません。指差しは「三項関係」が成立しているかを確認する行動だからです。
三項関係とは「自分・相手・もの」の3つが同時に結びつく関係のことです。たとえば子どもが犬を見て指差し、親の顔を見て「見て!」と共有しようとする——この行動は、言葉が出る前から「他者と何かを共有したい」という社会性の芽生えを示しています。三項関係は言語発達・社会性・コミュニケーション全般の土台となるため、非常に重要な発達指標です。
指差しの4つの種類と発達の目安
指差しにはいくつかの種類があり、それぞれ発達段階が異なります。「健診で見るのは何の指差しか」を知っておくことが大切です。
1歳半健診で最重要とされるのは「叙述(共感)の指差し」です。「犬がいるよ!」と大人に伝えようとする、共有・共感の指差しが出ているかどうかが社会性の発達の大きな指標になります。「欲しいもの・行きたい場所を指す(要求の指差し)」だけでは、社会的共有という点では不十分とみなされることがあります。
「手差し」や「視線での指示」でも代替される場合がある
指差しは人差し指一本で指すことが典型ですが、手全体を使って方向を示す「手差し」も同様の発達指標として評価されます。また、視線をあわせながら何かをじっと見て、大人の目を見てまた見る——という「視線での共有」も、指差しと同じ社会性の発達を示す行動です。
「指差しはしないが、手差しや視線で『見て』と伝えている」場合は、指差しの形式が違うだけで三項関係は成立している可能性があります。健診で指摘された場合も、このような他の共有行動があるかどうかを担当者に伝えることが重要です。
指差しをしない「原因」の整理
①発達の個人差(最も多いケース)
指差しの出始める時期には大きな個人差があります。言語理解が先行して身体表現が遅れるタイプ、慎重な性格で確信を持つまで表現しないタイプなど様々です。他の発達(歩行・言語理解・社会への関心・模倣)が概ね順調であれば、指差し単体の遅れは経過観察で改善することが多いです。
②環境・経験の不足
指差しは模倣から発達します。周囲の大人が指差しをする場面が少ない環境では、子どもが指差しを習得する機会が減ります。また、スマートフォンやテレビを主な視覚刺激にしている場合、双方向の共有体験が乏しくなることがあります。これは「改善できる」要因です。
③聴覚の問題
聞こえに困難があると、名前を呼んでも振り向かない・言語理解が遅れる・応答の指差しが出ないなどの形で影響します。1歳半健診では聴覚のチェックも行われますが、日常生活での聴覚の確認も重要です。聞こえが心配な場合は耳鼻咽喉科への相談も検討してください。
④発達特性(ASD等)による影響
自閉スペクトラム症(ASD)の特性として、共感・共有の指差し(叙述の指差し)が出にくい場合があります。ただし指差しの遅れだけでASDを判断することはできません。他の特性(社会的関心・模倣・アイコンタクト・感覚の特異性等)との組み合わせで総合的に評価されます。
本当に心配すべきかの判断基準
指差し単体ではなく「複数の領域」で判断する
指差しが出ていないことより、以下の複数の観察ポイントを組み合わせて確認することが重要です(LITALICOをはじめ医師監修の専門機関が共通して強調している点)。
M-CHAT(乳幼児期自閉症チェックリスト)について
M-CHATは16〜30か月の乳幼児を対象とした自閉スペクトラム症のスクリーニングツールで、一部の小児科や健診で使用されています。指差し関連の項目を含む23の質問から構成されています。
重要な点として、M-CHATはスクリーニング(ふるい分け)であり診断ではありません。陽性(懸念あり)が出ても、その多くは精密検査で発達障害の診断には至りません。あくまで「専門家への相談をすすめる目安」として機能します。
インターネットで日本語版を検索して確認できますが、結果の解釈は必ず専門家に相談してください。
家庭でできる指差し練習:段階別の方法
以下の方法は「指差しを強制的に教える」ためではなく、「指差しが自然に出やすい環境・経験を増やす」ためのものです。焦らず、楽しみながら取り組んでください。
ステップ1:共同注意の土台を作る(まず親が先にやって見せる)
ステップ2:絵本を使った自然な練習
ステップ3:日常生活への組み込み
指差しを促すおすすめの知育玩具・絵本
| 種類 | 具体例 | 指差しへの効果 | 目安月齢 |
|---|---|---|---|
| 音声ペン絵本 | アンパンマンことばずかん(バンダイ) | ペンで指す→音が出る。「指す→反応がある」体験を積める | 1歳〜 |
| めくり絵本 | いないいないばあ(松谷みよ子) | 期待感から手を動かす自発的な行動が出やすい | 0歳〜 |
| 動物・乗り物絵本 | どうぶつのおかあさん等(写真絵本) | 実物写真が「見て!」の共感を生みやすい | 1歳〜 |
| 指先知育玩具 | ボタン・穴に入れる系おもちゃ | 人差し指単独の動きを育てる | 10か月〜 |
| シールはがし台紙 | 100均のシールブック等 | 指先の分離と「つまむ」動作を育てる | 1歳〜 |
専門機関への相談:タイミングと相談先
「1歳半健診で経過観察」と言われた場合の動き方
「経過観察」は「異常」ではなく「もう少し様子を見ましょう」という意味ですが、具体的に何をするかが重要です。
- 「いつまで様子を見るか」を具体的に聞く——「次の3歳健診まで」では長すぎる場合がある
- 「どういう変化が見られたら再相談か」を確認する——判断の目安を明確にしてもらう
- 不安が強ければ健診を待たず保健センターや小児科に相談する——相談は「大げさ」ではない
- 記録をつけ始める——どんな場面で、何をきっかけに、どんな反応があったかを記録しておく
主な相談先と特徴
| 相談先 | 特徴 | 使い方 |
|---|---|---|
| 市区町村保健センター | 保健師・心理士に相談できる。無料。予約しやすい | 最初の相談窓口として最適 |
| かかりつけ小児科 | 定期健診のついでに相談できる。専門機関の紹介状も書いてもらえる | 「発達が心配」と伝えて相談する |
| 発達外来・小児神経科 | 医学的な発達評価ができる。待機期間が数か月になる地域も | 紹介状を持参して受診 |
| 児童発達支援センター | 療育・専門的支援が受けられる。診断がなくても利用できる場合がある | 地域に確認。療育を検討したい場合 |
早期相談・療育のメリット
「診断が出てから動く」では遅い場合があります。診断の有無にかかわらず、「気になる点がある」段階で相談・療育を始めることが早期支援の観点から重要とされています。日本の自治体の多くで、診断なしでも児童発達支援の利用が可能なケースがあります。
よくある質問
まとめ:今日から始められること
📌 整理:今日からできること
- まず「叙述の指差し」があるかを観察する——「欲しい」だけでなく「一緒に見て」という共感の指差しが出ているかを確認
- 手差し・視線共有など代替行動も確認する——指差しの形式でなく「共同注意が成立しているか」が重要
- 大人が毎日指差しして見せる——散歩中・読み聞かせ中・食事中に積極的に「あれ見て!」と指差してみせる
- 複数の発達領域を合わせて観察する——アイコンタクト・模倣・名前への反応・言語理解も一緒に
- 「様子を見ましょう」で終わらせない——具体的にいつまで・何が変われば再相談か聞く。不安なら保健センターに相談する
1歳半で指差しができないことは、多くのケースで発達の個人差の範囲です。ただし「大丈夫だから何もしなくていい」ではなく、今日から環境を整えながら観察を続けること、不安があれば早めに専門家に相談することが最もできることです。焦りは不要ですが、動き出すのに早すぎることはありません。
※本記事は情報提供を目的としており、医学的診断の代わりとなるものではありません。発達に関する具体的な心配がある場合は、かかりつけ小児科・市区町村保健センターにご相談ください。指差しの発達についてはLITALICO発達ナビ(医師監修)・日本小児科学会の情報も参考にしてください。
